ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回のテーマは、春ジャケットです。
STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
春先の装い問題、今年はジャケットから解決する
気温差10℃以上と乱高下の激しい今日この頃。冬の終わりと、春のはじまりを日替わりで(笑)感じる季節になってきました。まだ凍えるような寒い日もあるこの時季、若いころは「おしゃれは我慢」と無理をして、薄手のものに手を出し、うっかり風邪をひいていた大バカ者は私です。でも、心のベクトルは完全に春へと向かっている、それがファッションですからね。今はハイテクインナーという強い味方ができたので、かつてのような失敗の心配も不要。薄いものに手を出しても、防寒下着がカバーをしてくれます。また、ミックスするのもトレンド。上が春物でも足もとをタイツやブーツにしたり、ニットと薄手素材を対峙させたりと、季節感を織り交ぜあたたかさをカバーすることも可能。そこで今回は、先取りアイテムとして春ジャケットを探してみました。冬スタイルに一歩先行くアイテムをひとつ取り入れるだけで、気持ちも明るくウキウキしてきますよ。
地曳いく子が指南する
春ジャケットの選びかた、着かた
❶ トレンドは素材とシルエットでアップデート
引き続きオーバーサイズのジャケットは多く登場していますが、今年は肩のシルエットがコンシャスなものも出てきています。トレンドとしてコレと単純にひとつのスタイルを断定できないのが、今のトレンド。素材やシルエットなど、細かなディテールでアップデートしていくのが今らしさなのかなと思います。素材も多様化し、リネンとウールの張り感のある生地や、コットンシルクの艶感のあるもの、ハイテクファブリックなど、新たな質感が旬な気分を盛り上げてくれる要素に。振り切ったデザイン性より、大人はディテールと質にこだわってこそです。
❷ フラット感キープは必須事項
今年は、全体的に表面がフラットで、生地感もクールでソリッド。そして当然のことですが、春ジャケットは、冬よりも素材が薄くなっています。春ジャケットの鉄則ですが、シルエットが崩れるので「ポケットにものを入れるな!」です。入れてよいのはせいぜい交換した名刺1枚ぐらい。ついたくさん物を入れてしまったなんてミスを犯さないように、何ならポケットのしつけ糸は取らなくてもよし。フラット感をキープしてこそ、今の顔になれるのです。
❸ 多様化するジャケットコーデ
ノーカラーのツイードジャケットなど、春のコンサバジャケットは、一枚持っていると本当に便利。きれいめコンサバに着ても素敵ですが、オックスフォードシャツやダンガリーシャツの上に羽織って裾を覗かせても。ボトムにカーゴパンツやパラシュートパンツを合わせたら、かなりのおしゃれ上級者に見えます。寒い日は、その上にダウンジャケットを重ねてもOK。また、ジップアップのシンプルなジャケットコートに、シアーなベストを重ね着してもかわいい。それも素材が軽くなった春ジャケットだからこそできる技。決まったスタイルだけでなく、気分次第でコーディネイトの幅を広げ、楽しんでいきましょう。
❹ 花粉対策にも有効
この時季になると、毎年のように花粉に悩まされる私。そんな時こそ春のジャケットコートの出番です。冬のウール系コートは花粉をキャッチしてしまいますが、比較的つるっとした表面の春のジャケットコートたちは、玄関に入る前に軽く振って花粉を落とすことも可能。部屋に持ち込む量もかなり減ります。中はぬくぬく冬スタイルに春のジャケットコートで、気分を先取りしつつ花粉と風をガードするのもおすすめです。
地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、女優や著名人のスタイリングも数多く手がける。大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評を持ち、執筆も多く手がける。現在は、ファッションアイテムのプロデュースほか、テレビやラジオに出演するなど多方面で活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)『おしゃれは7、8割でいい』(光文社)『日々是混乱』(集英社)など多数。最新刊に『大人の旅はどこへでも行ける 50代からの大人ひとり旅』(扶桑社)。
※ 2024年2月現在の情報となります。
※ 表示価格は全て税込価格です。
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