ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回のテーマは、サスティナブルファッションの楽しみ方です。
STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
新しい時代、新しい考えでファッションを選ぶ
ここ数年、サスティナブルという言葉をよく耳にするようになりました。ご存知の通り「持続可能な」という意味ですが、このサスティナブルという考え、ファッションでいうと具体的に何?というのはすごく難しい。というのも、持続可能なことが人それぞれに異なってくるから。少し前に、エシカルファッションという言葉も出てきましたが、こちらは「倫理的・道徳的」な意味合いで、環境破壊の問題や、労働や社会問題を配慮し生産するファッションのことを指します。サスティナブルファッションと、同意義に使われることもありますが、私が考えるサスティナブルとは、その人なりの方法でファッションを継続していくことなのではないかと思っています。AIに、「環境破壊を止めるにはどうしたらいいか」と聞いたら、「それは人間が絶滅することです」と答えたという笑い話があるぐらい、突き詰めていくと極端な話になってしまいます。何が良くて、何が悪いということではないのです。ガチガチにあれもこれもダメではなく、まずはファッションを楽しみながら考えていければと思います。たとえば、オーガニックコットンの製品を選ぶことで、農薬による土壌汚染を少しは防げるかもしれない。服を買う時にそうした意識を少し持って選ぶことが、サスティナブルに繋がっていくのではないでしょうか。今回選んだ服たちも、それぞれにストーリーを持った服ですが、めちゃくちゃクールだと思いませんか?ファッションを純粋に楽しみ、きちんと意識して選ぶこと、それが私の考えるサスティナブルです。
地曳いく子が考える
サスティナブルなファッションとは?
❶ ものを買う=応援するということ
理想を言えば、自分が着たいと思うデザインで、環境や人権、社会的問題を全て配慮した服があれば最高です。でも、すべてをクリアした製品に出逢うのは、正直難しい。だからこそ、自分のできる範囲で意識していくことが必要なのです。買い物することということは、その企業の理念に賛同し応援することだと私は考えています。素材の処理に化学薬品を減らしたものなのか、リサイクル素材で開発した製品なのか。そうした環境を配慮した製品だけでなく、国内の工場と組み製品開発をすることで技術を持つ職人たちを守るということもサスティナブルに繋がると思います。現代は様々な試みが進んでいます。ものを買う時にひとつでも意識してみること。そのひとつのひろがりに賛同する企業が増えれば、未来に向け持続可能なファッションがより多く生まれるのではないでしょうか。
❷ 着ないもの、いらないものは買わない
環境にどんなに優しくても、着た途端に気持ちが下がる服では、ファッションとしてはどうかと思います。ファッションの醍醐味は、楽しむこと。たとえリサイクル素材を使った服だとしても、結局のところ着なければ意味がありません。支持されるデザインであってこそ、持続可能なわけです。気持ちだけ賛同するのではなく、今、自分に必要なものは何かを見極め、選択して買うことで、企業もその方向に動いていくはずです。
❸ ものを愛し、ヘビロテすること
とはいえ、サスティナブルな素材や取り組みだけが、すべてではないと思います。私は、ものを愛し、着倒すことも、ひとつのサスティナブルだと思っています。20年前に、ラグジュアリーブランドで、一生ものと思って、黒のラムレザーのフルレングススカートを、それこそ清水の舞台から飛び降りる覚悟で買ったことがあります。しかし、大事にしていたにもかかわらずカビが生えてしまい、一生着るはずがそこでダメになってしまいました。20年かけて月に数回しか着ないものと、週何度も登場して2シーズンぐらいで着倒す服。どちらが良いとか悪いではなく、結局のところ同じなんです。服は消耗品。流行も気候も情勢も変化します。一生ものと思ったのに、結局クローゼットの奥に眠ってしまった服に、心当たりありませんか?買ったものを着倒すぐらい愛用することも、ファッションを持続可能なものにする大切な考えだと思っています。
※ 2021年9月現在の情報となります。
※ 表示価格は全て税込価格です。
※ 六本木ヒルズ等各施設では、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、一部店舗・施設の営業内容を変更しております。 営業状況は定期的に変更がありますので、ご来店の際には事前に各施設HPをご覧ください。
地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、女優や著名人のスタイリングも数多く手がける。大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評を持つ。現在は、ファッションアイテムのプロデュースほか、テレビやラジオに出演するなど多方面で活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)『おしゃれも人生も映画から』(中央公論新社)『買う幸福』(小学館)『おしゃれは7、8割でいい』(光文社)『日々是混乱』(集英社)など多数。今秋、集英社より新刊2冊を上梓。
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