ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回は秋冬トレンド第二弾。バッグと靴で取り入れる秋冬のエッセンスと、トレンドにまつわる深いお話です。
STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
“クセ”のあるエッセンスを投入せよ
猛暑も過ぎ去り、急に秋めいてきた今日この頃。とはいえ、暑いの?寒いの?どっちなのという気候の定まらない日々。朝、起きてみないと、何の服を着たらいいのかわかりません。こんな時季は、まずバッグと靴のアップデートを。オフィスワーカー女史の皆さんは、全身トレンドというわけにいかないですよね。お仕事服がシンプルならば、バッグと靴でトレンドを投入。“クセ”のある今シーズンのエッセンスを取り入れただけで、“トレンディなシティガール”の完成です(笑)。
地曳いく子が指南する
バッグと靴でつくるトレンドの心得
❶ 個性の筋を一本通す
今シーズンに限らずですが、いろいろな要素がミックスしているのが最近のトレンド。キーワードをあげるなら、レトロ、スポーティーカジュアル、ギンギン80s……。もはやバラバラ。どのトレンドをとるかは、あなたのお好み次第。ただし、これと決めたら、そのシーズンは同じバッグと靴で毎日を過ごすぐらいの気持ちで。以前は、服に合わせてバッグと靴を変えるという考えでしたが、今は、バッグと靴でそのシーズンのスタイルの芯を一本通すほうが賢い選択だと思います。
❷ 何にでも似合うは中途半端
「このバッグはどんな服に似合いますか?」、とよく質問を受けます。気に入って買ったものであれば、私の答えは「どんな服でも毎日持つ」。個性があるものを毎日持つことが、その人の個性になってきます。逆に、何にでも合う無難なものは、結局、中途半端にしかなりません。トレンド感もなく、個性もなく。おそらく大人女史の皆さんは、すでにベーシックなバッグをお持ちですよね。だったら、思いっきり“クセ”のあるバッグや靴をセレクトしてみてください。おしゃれセレブは別として、一般女史の方々は小物で個性を出すほうが断然スマートで、コスパも良いです。だって、服は毎日着られませんが、バッグや靴は一週間同じでも誰も気にしませんから。
❸ デジャヴに惑わされない
見慣れないうちは新しいものでも、一般に広がると「流行」と認識されます。ですが、一度「流行」になると必ず飽きてくるもの。そんな時に、違和感のあるものが出てくると、 “新しい”と錯覚する。それが「流行の法則」です。21世紀までにあらゆるデザインで出揃ってしまい、今は過去の焼きまわしが、流行を作っていると言っても過言ではないです。ただし、既視感があるからと、昔のアイテムを引っ張り出すのは危険。デザイナーたちもそこは賢く、どこかにエッジィなところを挟み込んでいます。相当なおしゃれ上級者でないと、古臭さしか漂いません。
❹ 流行は回転ずしと思うべし
ぐるぐる回るトレンド。でも、やっぱり自分の中では受け入れられない時代やデザインってありますよね。流行は回転ずしみたいなものと思ってください。流れているものを見ていれば、流れて行ってしまいます。でも大丈夫、次のネタがやってきますから。おいしいネタだけ取ればいいのです。毎シーズントレンドに乗る必要はありません。だからこそ、これぞと思ったバッグや靴に出会ったら、毎日一緒に過ごしましょう。でないと、また次のトレンドのお皿が回ってきますよ。
❺ コンサバも極めればトレンド
コンサバ女史の皆さん、お待たせしました!淑女風バッグやローファーなど、コンサバがトレンドとして復活中。バッグならヴィンテージ風のパテント素材、ローファーなら色や素材にひねりのあるものが、今シーズンらしさをアップします。
❻ 日本人は黒い帽子を被っている
パステルカラーが気になる今季。髪の黒い私たち日本人は、いつも頭に黒い帽子を被っているようなものです。ですから、服に明るいパステルカラーを持ってくると、黒とのコントラストが強く、残念ながら似合わない……。トレンド色として取り入れるなら、バッグがおすすめ。どうしても服でという人は、少し髪を明るめにすると馴染みます。
地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、そのキャリアは30年超え。女優のスタイリングも数多く手がけ、大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評あり。独特の語り口も魅力で、現在はテレビやラジオでのコメンテーターとしても活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)、『脱「若見え」の呪い “素敵なおばさま”のススメ』(マガジンハウス)など多数。9月には最新刊『おしゃれも人生も映画から』(中央公論新社)を上梓。
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