INSTANT FLOW

そこに恋はありますか——藤原ヒロシの連載「INSTANT FLOW」#63

そこに愛はあるんか?って女将さんはいつも聞くけれど(アイフル)、そこに恋があるのもいいな、なんて思ったり。仕事も遊びも、音楽も物理学も、恋みたいな熱量で打ち込んでいればミラクルだって起こるかも。かたやHIROSHI FUJIWARA(hf)のインスタに漂う謎を目で追いかけるだけの当連載、第63回は2024年10月〜2025年3月の投稿からおとどけいたします。

INSTAGRAM & TALK BY HIROSHI FUJIWARA
TEXT BY MIKA KUNII

10月25日——あなたは誰?

——それでは「あなたは誰?」シリーズから。
hf  勅使河原季里ちゃんです。
——いけばな草月流三代目家元、勅使河宏さんの長女の季里さんですね。
hf そう、草月ホールの季里ちゃん。でも僕は勅使河原って名前も知らなかったくらいで。彼女がニューヨークでイールドッグっていうパンクバンドをやっていた頃に知り合いました。
——草月流でパンク、カッコいいですね。いつ頃ですか?
hf 80年代ですね。
——華道界の人だとは知らずに?
hf はい全然。で、今は草月のアートプロジェクト・ディレクターに就いているのかな、そのつながりで2月の「FRAGMENT UNIVERSITY」は草月ホールで行いました。

11月22日——復活だッテリア




——閉店したミラノのラッテリアが復活したんですか?
hf そうですね。いちど閉めたけれど再開。同じ場所で。
——よかった。もう食べられないと思っていました。
hf ご夫妻はお年を召しているので、あと半年だけ、店に立つっていうことだそうで。
——そろそろ半年たっちゃう。
hf ですね。でもラッテリア自体は続けていくようですよ。
——味は引き継がれてゆく。

11月25日——恋が、そこにある

——小西康陽さんの「失恋と得恋」。
hf 良かったですよ。
——小西さんとは親交があるのですか?
hf 会ったことはあるけど、あまり話したことはないんです。
——アルバム、良かったんですね。
hf はい。やっぱり、人が好きなことをやっているのは面白い。流行ってるからじゃなく、その人が今、本当にこれをやりたいんだろうなっていう感じが僕は好きなんです。
——掛け値なしに好きなことを。
hf そう。今この年齢のときに、ほんとにやりたいことをしている。
——その熱が確かにそこにあった。小西さん自ら歌っているのですか?
hf めちゃ歌ってますよ。最近はひとりで弾き語りライブもやってます。
——失恋と得恋。「とくれん」って読むんですかね。「エレン」だったりして? 聴きたいです。

12月3日——HFと新聞

——日経新聞の日曜版『NIKKEI The STYLE』の企画で、トークショーをされたんですね。
hf ここの紙面で何かできたらって、ずっと言ってたんですけど、それは叶わなかったですね。
——新聞で連載を持ちたかったんですか?
hf そう。20年ぐらい前から、新聞で連載か何かをやりたいって言っていたんです。海外では日曜日にみんな分厚い新聞(NY TIMESとかFTの日曜版)を持ち歩くじゃないですか。『NIKKEI The STYLE』だったらできるかも、と。
——藤原さんがそんな意思表示をしていたなんて。『NIKKEI The STYLE』、いい媒体ですよね。
hf 伝わらなかったですけどね。で、今回はそれとは別で、日経のアート関係の担当者から頼まれて。
——連載ではなくイベントを。藤原さんが連載をはじめたら、若い人も新聞を読み始めたかもしれないけれど。トークショーのタイトルは「藤原ヒロシさんとアート(仮)」?
hf はい。
——「それの何が面白いんですか?」っていうタイトルも、いいですけどね。
hf ほんとはそっちを大きくしたかったんですけどね。
——何をお話しになったんですか?
hf アートの何が面白いんだろうって話です。

12月7日——はじめての立石

——せんべろ商店街。藤原さんが立石に?
hf はじめて行きました。有名な焼き肉屋さんがあって、連れていってもらったんです。すごくおいしかった。
——お店の名前、覚えてないですよね?
hf 「幸泉」
——ありがとうございます♪

12月9日——その場で終わりますから

hf 映画『どうすればよかったか?』。ほんとに、どうすればよかったんだろうなと思いますね。興味深かったけど。
——未見ですが……深く考えさせられ、でも簡単に答えは出ない、というような内容でしょうか? どうしてこの作品を観たんですか?
hf だってこういう映画、好きだから。
——元気があるときでないと観られなさそうな気配もしまして。
hf 僕は全然。
——観た後に落ち込みそうだとか、そういうことを恐れないんですよね、藤原さんてね。
hf はい。落ち込まないです。
——この作品とは話は変わって、世の中には読後感が最悪な映画があるじゃないですか。そういう類のものを観ても影響なしですか?
hf 全然。何にも思わない。
——そのコツ、教えていただきたいです。
hf その場で終わりますから。
——自分に照らして落ち込んだり、しばらく何も手につかなくなっちゃったり……
hf え、だって他人ごとですよ。
——訓練あるのみですね。今の自分に必要な気の持ち方かもしれません。

12月9日——銀座のベートーベン

——ここは何処ですか?
hf 『銀座ウエスト』じゃないですか。
——あ!(右側を指して)ここら辺にベートーベンの像がありますね。切り抜かれると分からなかった。
hf レコードプレーヤーがかわいくて。
——清潔感あふれ、珈琲もミルクティーもおかわり自由なウエスト。

12月13日——アニエスべーという時代

hf アニエスベーとのコラボです。
——帽子、「かぶってましたね、昔」ってコメントありますね。
hf はい。昔、めちゃめちゃかぶってた。80年代かな。
——ちょっと意外でした。
hf アニエスベー、めちゃ着てましたよ。当時ボーダーシャツを買おうと思ったら、アニエスベーくらいしかなかった。
——アイコニックな白黒ボーダーとスナップカーディガンに憧れて、着てました。白いクルーネックの。
hf あれ、ちょっと嫌だったんですけどね。
——へえ、白い襟ぐりが?
hf 普通のがよかったんです。GAPにはあったけど、当時まだGAPが日本になくて(*GAPの創業は1969年。1987年に現在のロゴに変更。日本へは95年、東京・阪急百貨店内にオープン)。
——GAP、なかったですか?
hf なかったの、80年代は。
——GAPのCM、かっこよかったな。しみじみ。

12月17日——ごほうびキャベツ


——東千歳でバーベキューを?
hf バーベキューはしなかったですけどね。「東千歳バーベキュー」っていう名前なんですよ、掘っ立て小屋の中で延々と鶏を食べさせてくれるお店です。
——鶏料理店なんですね。
hf そう、メニューは鶏だけ。
——めちゃおいしそうですね。「キャベツがおいしい」って書いてある。
hf 鶏もおいしいけど、最後のキャベツに味が染みてて。いいお店です。
——鉄板の縁のあたり、おいしそう……。スキー場の近くなんですか?
hf いや。空港から1時間ぐらい。札幌にいくときは大体、寄ります。

12月17日——なめらか追体験

——コンビニスイーツの最高峰?
hf めちゃめちゃおいしかったです。神泉にあった「文琳」の杏仁豆腐を思い出しました。
——「文琳」の!? 大好きでした。これは食べるしかない。

12月28日——この世界のもつれを知れ

hf NHKスペシャル「量子もつれ アインシュタイン最後の謎」、面白かったです。
——面白かった! そしてなんにも分からなかった!
hf なんにも分かんないですよね。分かんないものが、もつれてるんです。
——果てしのないもつれに呆然としました。
hf 分かんないことを必死で分かろうとする科学者たちと、分かんないものは分かんないって言うアインシュタインと。
——藤原さん、あの難しい内容もすぐに思い出せるんですね……。科学者たちが繋いだバトン、すごかったです。
hf 量子って、見ると違う動きをするものなんですよね。
——量子力学ですね。観測すると粒子の動きが変わるっていう。
hf はい。コペンハーゲン解釈というものがあるんだけど、それ自体が科学じゃないんじゃないかとも言われていて……。とにかく、もつれって言葉は結構いいなと思った。
——いいですよね、量子もつれ。英語で何ていうんだろう(Quantum entanglement)。もつれブーム、くるか(笑)?
hf もつれブーム、いいんじゃないかな。
——量子力学ってほんとに興味深い。変えたいと思う事柄をみんなで注視すれば、変わっていくんですかね? 未来も変えられるのか?
hf どうなんですかね(笑)。 二重スリット実験、2つのスリットに穴を開けてこっちから量子を吹き付けると、本来だったら穴が開いたところを真っすぐ通るはずが、誰かが見ると、ばらばらになるんです。実際に見てもそうだし、カメラで撮ってもそうなんです。でもカメラを切ると、真っすぐになる。
——???
hf 謎ですね。

12月29日——MICHAEL CHERNO

——この絵、気になります。
hf マイケル・チェルノっていう人の絵ですね。若いウクライナ人。たまたまインスタで見つけて、いいなと思って、購入しました。
——藤原ヒロシに発見された。ギャラリーにも所属していないんですか?
hf 聞いていないですが、どこにも所属していないかと思います。
——どういうところがお好きなんですか。
hf クラシックな絵に、ヴァンダライズ(Vandalize)。スプレーで。

12月30日——年末の使者

——「難波」の鉄火巻き、赤酢なんですね。美味がびっしり。年末はいつも?
hf はい、年末はいつも。お店が閉まる時に届けてくれる。
——届けてくれる……最高ですね。

1月1日——サンドと、どんど

——こちらは?
hf 伊勢の『シラセ』という店の、サンドケーキです。クラシックなバターケーキにお砂糖をまぶして。
——わあ、なんだかお正月らしい。伊勢に帰ったんですね。
hf うん。
——こちらは伊勢神宮?
hf はい。12月31日の晩から至る所で大きいたき火があるんです、伊勢神宮って。「どんど火」っていうんですけど。
——どんど火を見て、その後おうちでサンドケーキの年越し。この中はどうなっているんですか?
hf 何にもないですよ。

1月10日——なに弾こっかな


hf カシオとコラボしたキーボードです。
——鍵盤楽器のコラボは珍しいですか?
hf 初めてかも。これいいですよ、家にちょうどいい大きさ。

1月10日——銀座の偏愛メニュー

——『煉瓦亭』。いつも頼むものは決まっているんですか?
hf チキンカツが多いですね。好きなんです。
——煉瓦亭のは骨付きですね。藤原さんの銀座は、ウエスト、煉瓦亭、王道コース。
hf あと、ひょうたん屋のうなぎ。

2月1日——堀内誠一展へ



——堀内誠一展、どうでしたか。
hf いや、めちゃめちゃ良かったです。スタイリストの堀越絹衣さんとお茶した時に、面白かったと教えてもらって。
——堀越絹衣さん、まさに『anan』のスタイリストでいらした方ですね。
hf そうですね。僕は堀越さんの手伝いしてたから。
——藤原さん『anan』でスタイリストの手伝いを?
hf はい、82年。コラムも書いたりして。
——その号、展示の中にありました?
hf いや、展示は70年代のだったので。
——展示を観た大学生の女子が衝撃を受けていました。あの頃の『anan』、めちゃめちゃカッコいい、攻めてるねって。何なのでしょうね、あの頃の熱量は。実験的で、ヌードあり、今の時代ならアウトな表現あり。
hf やっぱりあの頃は、見るものすべてが初めてだった、というのもありますよね。全員が「南フランスって何ですか?」だったじゃないですか。今は情報の確認作業ですから。
——知らなかったことを雑誌で知った時代でしたね。堀内誠一さんの印象はどんなでしたか?
hf 堀内さん、僕は知らないんです。だから今回初めてちゃんと見たけれど、ダイナミックでいいですね。今って、たとえば写真を100枚撮ってその中からいいのを選んで誌面にするんだけど、あの時代は2枚しか撮れなかったものをどうやって2ページにするか。あるもので何とかしようという時代と、たくさんある中で選ぶ時代。真逆ですよね。僕はいつも洋服でも何でも与えられたものの中でやるのが好きなんで、堀内さんの血を受け継いでいるタイプかも。
——与えられた中で最大限。展示自体はどうでした? 
hf すごく良かったです。だいたいが撮影不可でしたけどね、雑誌の複写になっちゃうから当然ですけど。誌面で大胆に使った写真を、もっと大胆に大きくしてましたよね。

2月4日——HYUKOHのアルバムの話



——これは?
hf HYUKOHっていう韓国のバンドです。めちゃめちゃ売れてますよ。アルバム5枚セットのデザインを頼まれて、2年ぐらい前から進めていたんですけど……
——ついにリリースされた。「Funeral for a friend」というタイトル?
hf それはイベントです。ARARIO GALLERY SEOULでやったイベントで、そこでこのボックスセットを販売しました。墓石なんですよ。開けるとアルバムが入ってる。
——そもそもなぜFuneralなんですか。
hf なんでかなあ……。メッセージのやりとりだけで進めていたんですが、途中から「墓石にしたい」って言われて。大丈夫? この人、死んじゃうんじゃないのって思ったんですけど(笑)全然大丈夫でした。
——アルバムの内容と墓は関係ないんですか?
hf 分かんないんです、ぜんぶ韓国語なんで。でもイベントでみんなが買って帰るのを見て、めちゃ面白いと思った。だって翌朝起きたらみんなの家に墓石があるんですよ。
——不思議。
hf 最高だと思います。ボーカル、めちゃめちゃいいですよ。このアルバムのPVに僕も出てます。僕が穴をのぞいて……
——この人たちが中にいる……

2月9日——筋肉は裏切らない

——立花ハジメさん、こんな筋肉もりもりなんですね。
hf 筋肉もりもりですよ。毎日ジム行ってんじゃない?
——細いイメージだったから、ちょっと意外でした。

2月14日——あなたは誰? パート2



——そして「あなたは誰?」シリーズです。
hf これがHYUKOHですよ。ネイビーの帽子の方。
——お名前は?
hf オ・ヒョクだったかな。

2月24日——ラブがそこにいる

hf 僕は知らなかったのだけど、マークが日本に来た時にLOVOT(らぼっと)買ったみたいですね。
——マーク・ジェイコブズ、めっちゃ愛でております。

2月27日——いいネーミングってなんだろう?

——フラグメント・ユニバーシティ、例の草月ホールで行われた回ですね。
hf これは、この日に来た人のためにスポンサーのカルティエが作ってくれたノート。うれしかったです。
——さすが素敵ですね、カルティエ。そして講義はネーミングの話だったんですね?
hf はい。ネーミング、日本ではとにかく分かりやすく覚えやすいものが良いネーミングですよね。食品や医薬品の場合は、それもわかるんですけど。
——「甘栗むいちゃいました」とか「虫コナーズ」とか。小林製薬も名作が多いですね「のどぬーる」、「熱さまシート」。
hf その一方で、カッコいいネーミングということで例をあげると、ロールスロイスの「カリナン」。
——カリナン。
hf そうそう。(当時)世界最大のダイヤモンドの名前です。1905年に南アフリカで発見され、イギリス国王に贈呈されたんです。
——そのダイヤ、Tシャツにプリントしていましたね。
hf はい。あとポルシェの「カイエン」、赤唐辛子のカイエンペッパーに由来しているとか(「痛快」「冒険心」「生きる喜び」という意味にもつながる)。日本のメーカーではたぶん許されそうにないじゃない? あと、カルティエの「タンク」。
——時計で、なぜタンクっていうんでしょう。
hf 第一次大戦を終わらせた戦車を参考にしてケースのデザインをしたことから、戦車を意味する「タンク」になったんだとか。ロールスロイスで「タンク」、カルティエで「カリナン」だったら順当すぎて面白くないけど、逆だからこそいいんですよね。
——なるほど。そういう奥行きやウィットや背景がある。
hf ネーミングといえば、映画の邦題も。ときどきイマイチなのがありますよね。原題では意味はわからずとも想像力をかきたてるものでも、日本では……
——あえてネタバレしちゃうの、ありますね。
hf 『パラサイト』はあのままでいいのに『半地下の家族』ってつけたり。
——よかれと思ってつけちゃうんです、きっと。
hf 『グラビティ』も、『ゼロ・グラビティ』にしちゃうし。
——意味が変わってる。原題が「Taken」の映画が日本では『96時間』になっていたり。それにしてもネーミングって、難しいんです。商標地獄というものもありますし。「カリナン」は商標取ってるんですかね? 
hf 絶対に取ってますよ。ロールスロイスは恐らく何十年も前に取得して、いつか使おうとしていたはずです。
——うーん、勉強になる。

3月2日——僕はガンダムで行く



——ニューヨークに行きましたね。
hf はい。ガンダムでニューヨークに行きました。
——ガンダムで。飛行機で行ったんですよね、なんて。イベントはどちらで?
hf タイムズスクエアにバンダイのお店があるんですよ。

3月6日——自然署の雑炊

——自然薯の雑炊! おいしそう〜。
hf おいしかったですね。滋賀の比良山荘。ジビエ料理が有名な山荘です。
——この自然薯の中にお米を入れて炊くんですか。うわあ、なんと滋味深そうな……。再訪ですか?
hf いや、初めてでした。熊料理が有名なので食べに行きましょうって、連れられて。
——どうでした?
hf 生臭みはない。熊の脂はあっさりしていて、どの肉の脂よりもおいしいらしい。
——藤原さん、肉のハイウエイを爆走中。すごいスピードで。

3月15日——うんと話題になりました

——で、聞いてみたかったのはこの感想です。
hf めちゃめちゃ……おいしくなかった。うんと甘いんですよ。カップ麺に、イチゴ練乳パウダーみたいなのを混ぜる。
——30周年記念商品。そうやって、うんと話題になったからいいんじゃないですか。ちなみにどちらで買い求めたんですか?
hf 東雲イオンです。24時間やってて、車で行きやすいんで。

3月17日——アイ愛

hf シアトルミュージアムの、アイ・ウェイウェイ展。
——アイ・ウェイウェイ、お好きですよね。この展示はいかがでしたか?
hf いや、最高でした。
——藤原さんのアイ・ウェイウェイ愛について、少し教えてください。
hf 今回いちばん良かったのは、これなんです。
——この写真は何でしょう?
hf タイムズスクエアで87年に撮ったアイ・ウェイウェイ本人の写真なんですけど。似顔絵を描いているところなんですよ。
——そんなことをしていたんですね。
hf そこで描いた内のひとりが、ユナボマーなんですよ。
——ユナボマー、テロリストだ。
hf ユナボマーは、87年ではまだ捕まってなかったから。FBIが出した手配書しかないんですよ。で、手配書を描いてるんですよ。
——わ。なるほど。
hf タイムズスクエアで、今までここにユナボマーがいたよ、みたいな意味だと思うんです。すごくないですか。それが彼のアートだと思うんです。
——力強いというか、面白というか。これもアイ・ウェイウェイですか?
hf アイ・ウェイウェイのレゴ作品です。
——アイ・ウェイウェイの魅力を知りました。

3月23日——香港の変わらない部分


——香港に行かれたんですね。「蓮香」、ワゴンで運んできてくれるところですね。
hf ここも3回ほどオーナーが代わったみたいですが、中身はおんなじですね。
——変わらない味。これは何ですか?



hf ツバメの巣のデザート。杏仁豆腐みたいのが中に入ってる。ミルクプリンみたいな。
——ふぁー、食べてみたい。ワゴンに山と積まれた蒸篭がたまらないです。香港はどうでしたか、街の雰囲気とか。
hf あんま歩かなかったですけど、この辺りは変わらずいいですね。泊まったのはハイアットリージェンシー。
——九龍ですね。

3月26日——年老いたラッコに心を寄せて

——「年老いたラッコに食べさせてあげたい」。コメントが面白いんですが(笑)
hf ラッコって、もう日本にあと3頭かしかいないんです。
——そうなんですか?
hf そのうち2頭が鳥羽水族館にいますが、もう老人。
——絶滅してしまうんでしょうか。
hf 絶滅危惧種なんで輸入規制で入ってこなくなって。そしてラッコって繁殖がめちゃめちゃ難しくて。かつてはたくさんいたけど、激減。
——海外にはいるんですか?
hf 海外に野生のラッコはいます、たぶん。
——手をつないで寝るんですよね。かわいい姿で。
hf そんな境遇だから、好物を食べさせてあげたいなって。

3月26日——推しの話をしましょう

hf このドローイングがめっちゃ好きです。スクリプカリウ落合安奈っていう人の作品。ルーマニアと日本のハーフかな。この人の、いいですよ。
——どちらで知ったんですか?
hf 知り合いに教えてもらったんですけど「アートフェア東京」で猿をたくさん出品していて、その中の1枚です。水彩画で、目と鼻だけ油です。写真もいいですよ。
——藤原さんって、キュレーションはされないんですか。
hf しないです。
——されたらいいのになって思いますけど、藤原ヒロシ美術館。

3月29日——アイとパンチの効いたおみやげ

——なんですか、これ。
hf アイ・ウェイウェイの土産物屋で買ったんです。これすごくないですか?
——「2016年の大統領選の調査報告書」?
hf トランプがロシアと関係してたのではという調査書を、クリアファイルにプリントしたグッズです。
——お土産物なんですか? パンチが効いてる。
hf いいでしょ。

3月29日——最近、なに観た?

——最近、面白かった映画やドラマはありますか?
hf あれ面白かったですよ。『異端者の家』。A24製作、ヒュー・グラントの新作。原題は『Heretic』だったかな。
——うわ怖そう! サイコスリラーですね。他にもありますか?
hf あります。『ギャング・オブ・ロンドン』シーズン3、『ガンニバル2』。
——『ガンニバル』はもう完結するんですかね?
hf そうみたいです。めちゃスピード感あります。
——柳楽優弥、すごくいいですよね。ちなみに藤原さんは『ツイン・ピークス』はお好きでした?
hf いや、観てないです。
——いた! 観てない人。実は私も当時観てなくて。「今さら観てないとは言えないドラマ」No. 1。
hf ちょっと見始めたけど、展開がなんというかスロー過ぎて。あと、『悪魔と夜ふかし』も面白かったですよ。70年代の話だけど、時代の再現力がすごい。昔、日本でもよくあった、オカルトテレビ番組ってあるじゃないですか。やらせのはずが、ほんとに霊が乗り移るみたいな、そういう話。
——日本のドラマはどうでした?『ホットスポット』は?
hf 観てました。すごく良かった。ディテールの作り方の上手さ、ウェス・アンダーソンぽいですね。
——ですね、お洋服の感じとか。
hf なかなかの『E.T.』オマージュでしたけどね。指がピーって光って。
——なるほど。大河ドラマはご覧になってます?
hf 大河、いちども観たことないです。朝ドラも観ない。『ツイン・ピークス』も観てないし、ジブリも観てない。
——ありがとうございます(笑)

 

藤原ヒロシ|Hiroshi Fujiwara
1964年三重県生まれ。DJ、音楽プロデューサー、ファッションクリエイター。fragment design名義でファッションをはじめさまざまなジャンルのクリエイティブ・ディレクションを行い、ストリートカルチャーに多大な影響を与えている。