MY STYLE IS NO STYLE

コピーライターが組みたいアートディレクターNo1 副田高行さんの[ぼくの広告デザイン術]

TOYOTA、ANA、サントリー、earth music & ecologyなど、アートディレクターの副田高行さんが1980年から40年間にわたって制作に携わった新聞広告約100点を展示する「時代の空気。副田高行がつくった新聞広告100選。」が現在、富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館(群馬県)で開催中(〜1/26)。そこでコピーライターとして活躍する国井美果さんに、コピーライターの目線から、副田さんならではの広告デザインが生まれる秘密を探ってもらいました。

Interview by Mika Kunii
Portrait by Akiko Arai
Book-photo by Koutarou Washizaki

まず、副田さんが手がけた広告を見てみよう!

soedakuni_g_2001
1/9サントリー ウイスキーキャンペーン(1988)「プランナーから小錦さんの名前が出てきた時、まっ先に思ったこと。あっ、オールドのボトルに姿が似ているな。で、黒い衣装に身を包んだ後ろ姿で登場してもらった訳です」(副田) ad:副田高行 / cd:佐々木宏、山田健 / c:児島令子 / d:久保雅由、田中友朋、藤田伸二 / ph:坂田栄一郎
soedakuni_g_2002
2/9ストライプインターナショナル earth music & ecology(2014)「〈あした、なに着て生きていく?〉という児島さんの真っ向勝負なコピーのもと、表現は、宮﨑あおいという、今を生きるひとりの女性を、ポートレイトを撮るように撮影してもらいました」(副田) ad・cd:副田高行 / cd・c:児島令子 / cd:八木泰介 / d:太田江理子 / ph:藤井保 / st:藤井牧子 / hm:小西神士 / lc : 加藤雄二 / pr:玖島裕、佐々木カンナ
soedakuni_g_2003
3/9トヨタ クラウン(1988)「こんなに魅力的な色なのにピンクは本当に危険な色。一歩まちがえると下品になるのでプレゼンから印刷まで細心の注意が必要でした。写真も、車の広告写真らしからぬ、車のある美しい風景を贅沢にスナップしてもらいました」(副田) ad:副田高行 / cd:佐々木宏 / c:前田知巳 / d:太田江理子 / ph:上田義彦 / lc:田谷勉 / pr:西澤恵子
soedakuni_g_2004
4/9東京ガス 企業広告(2009)「テリー・ジョンスンこと湯村輝彦さんのイラストレーションに、それとよくなじむユーモラスな書体(通称『奥脇文字』)、そしてぼくのヘタウマデザイン。まさにヘタウマはパンク、表現の革命だと思いませんか?」(副田) ad:副田高行 / cd:仲畑貴志 / d:佐藤功 / il:湯村輝彦 / a:奥脇吉光 / c:杉山明人
soedakuni_g_2005
5/9サントリー 樹氷(1983)「これだけ見ても若い人にはまったくわからないかもしれませんね。田中裕子さんの〈タコが言うのよね…〉のセリフが日本中を席巻した樹氷の、ソーダで割ったら『タコハイボール』という飲み方提案の広告です」(副田) ad・d:副田高行 / cd・c:仲畑貴志 / p:高崎勝二 / il:ひこねのりお
soedakuni_g_2006
6/9新潮社 新潮文庫(1984)「打ち合わせ中に糸井重里さんがふっといなくなって。5分ほどして戻ってくるなり『これで』って、ちっちゃな紙を渡されたの。そこに書かれていたのが〈想像力と数百円〉という日本のベストコピー史上に輝く名作コピーだったんです」(副田) ad:副田高行 / cd・c:糸井重里 / d:田中啓子 / ph:十文字美信
soedakuni_g_2007
7/9森ビル 企業広告(2009)「土屋尚武さんに、森ビルが考えるヴァーティカル・ガーデンシティ(立体緑園都市)構想のイラスト化を依頼。1年半の月日をかけて完成した大作は、2009年6月2日、森ビル創立50周年のタイミングで30段の新聞広告として掲載されました」(副田) ad:副田高行 / cd・c:前田知巳 / d:伏屋雅美、溝江彩 / il:土屋尚武
soedakuni_g_2008
8/9シャープ 首都圏キャンペーン(1989)「仲畑貴志さんがくれた長いコピーに頭を抱えていたら、ふっと高校の先輩の南伸坊さんの著書『ハリガミ考現学』のことを思い出したんです。そうだ! これをハリガミにして町の景色の中で撮れば広告になるぞって」(副田) ad:副田高行 / cd・c:仲畑貴志 / cd:深貝博一 / d:棟方則和 / ph:中道順詩
soedakuni_g_2010
9/9ANA 企業広告(2002)「どんな曇り空でも飛行機で上にあがったら、空は絶対にANAの企業カラーの青色でしょ? だから『いい空は青い。』。これだけコピーが言い切っているんだから青空(小さく機影も写ってます)の写真に置くだけでもう十分」(副田) ad:副田高行 / cd:佐々木宏 / c:一倉宏 / d:小野勝也 / ph:鈴木理策

コピーの数だけデザインは生まれる

国井 副田さんといえば、「コピーライターがコピーをレイアウトしてもらいたいアートディレクターNo1」だと言われていますよね? ご本人としてはその理由はどこにあると感じていらっしゃいますか?

副田 TCC(東京コピーライターズクラブ)がそういうアンケートをとったことがあってね、もう何十年も前のことだけれども断トツだったのよ(笑)、理由は知らないけど。そもそもぼくには自分の代名詞となる表現のスタイルがない。サン・アドの葛西薫さんやライトパブリシティの細谷巌さん、浅葉克己さんであればすぐにそれぞれのトーンが思い浮かぶでしょ? ぼくにはそれがまったくないんです。

副田高行|Takayuki Soeda アートディレクター。1950年福岡県生まれ。74年朝日広告賞入選(コカコーラ)。75年スタンダード通信社入社後、76年に朝日広告賞グランプリ受賞(カゴメトマトジュース)。1980年サン・アドへ入社、「サントリー ナマ樽」を手がける。1985年仲畑広告制作所へ入社。東京ガス、サントリー、JR九州などを手がける。96年「副田デザイン制作所」を設立。主な仕事としてシャープ、TOYOTA、ANA サントリーなど。数多くの作品が受賞。著書に『副田高行の仕事と周辺』(六耀社)『世界のグラフィックデザイン61 副田高行』(DNPトランスアート)『副田デザイン制作所仕事集』(美術出版社)。東京アートディレクターズクラブ会員、JAGDA会員。

それで思い出すのが、2018年に横浜の新聞博物館で「時代の空気。副田高行がつくった新聞広告100選。」を開催したときのこと。ぼくの〈広告の神様〉である秋山晶さん(現・ライトパブリシティ代表取締役CEO)から初めて手紙をいただいたんです。自分のラジオ番組の中で展覧会を紹介させてもらった、と。続けて、展示された100点の新聞広告のデザインがすべてまったく違うデザインだったことに驚かされたって書いてあったんです。たぶん秋山さんのこの言葉が、国井さんの問いに対する答えなんだと思います。

soedakunii_g2_0001
1/3「朝日広告賞」1976年度一般公募の部グランプリ カゴメによる課題作品 3点シリーズ
soedakunii_g2_0002
2/3「朝日広告賞」1976年度一般公募の部グランプリ カゴメによる課題作品 3点シリーズ
soedakunii_g2_0003
3/3「朝日広告賞」1976年度一般公募の部グランプリ カゴメによる課題作品 3点シリーズ

古い話になるけど、この3つの作品はぼくがまだ小さな広告代理店にいた1976年、26歳のときに朝日広告賞の「一般公募の部」に応募してグランプリをもらった作品です。

国井 シンプルで強いデザインですね。  

副田 当時のぼくは秋山さんや細谷さんのいるライトパブリシティのデザインに憧れて、ライトに入りたくて入りたくて仕方なかったの。都立工芸高校のデザイン科を卒業してくすぶっていた自分の目を広告デザインの世界に向けてくれたのも、20歳のときにたまたま新聞で見た秋山・細谷コンビの名作「男は黙ってサッポロビール」の広告でしたからね。もしかしたらぼくが国井さんの上司だったかもしれないけれど(笑)。

国井 ライトパブリシティは日本で初めて設立された広告制作会社で。50~60年代のDDB(アメリカの広告代理店)のノン・グラフィックという、原点ともいえる広告手法をいち早く取り入れた極めて洗練されたデザインが特徴的で、秋山さんと細谷さんのキユーピーマヨネーズの広告シリーズは50年も続いています。って脚注、入ります(笑)

副田 でも朝日広告賞の作品を見て声をかけてくれたのは、ライトパブリシティではなくて、そのライバル会社の「サン・アド」にいたコピーライターで、すでにスターだった仲畑貴志さん。その後、サン・アドに空きが出て1980年に中途入社して初めてつくった広告がこれなんです。

サントリー 生樽(1980) アートディレクター:副田高行 / クリエイティブ・ディレクター:仲畑貴志 / コピーライター:山之内慎一

国井 さっきのデザインとずいぶん違いますね。

副田 小さな広告代理店から、開高健さんや山口瞳さんの作ったサン・アドに移った直後のこと。クリエイティブディレクターの仲畑さんに大抜擢してもらって、いよいよ憧れのサントリーの新聞全面広告(15段)を手がけられるというんで張り切ってコピーライターの山之内慎一さんと案を出すんだけど、ことごとく仲畑さんから「つまらない」って突き返されるわけ。何度やってもダメなの。そのやりとりの中で、要するにライトパブリシティの真似をしていてもダメなんじゃないの?的なことを指摘されるんだけど、そのひと言がきっかけになって、ライトと真逆のことをやってみたんです。素敵なイメージ写真を外して、美しい写植文字を活字文字に変えて、フォントは格調の出る明朝ではなくゴシック、しかも縦組みにしちゃう。印刷もわざとかすれさせて、よく見ると白地に無数のゴミまで散らばってる(笑)

国井 ゴミですか!?

副田 そう、ゴミ(笑)。ゴミが斑点状に散らばるよう指定したの。

国井 でもその結果、グッとリアリティが出てきた。

副田 それまで自分が憧れていたアメリカナイズされたきれいなデザインから、セールストークそのままのコピーが活きるよう、大正時代のチラシとか号外みたいなものを目指してみたら仲畑さんからOKがもらえて、あにはからんや、ADC(東京アートディレクターズクラブ)賞までいただけた。以来40年間、コピーライターから受け取ったコピーを自分の好きなデザインに収めるのではなくて、ひとつひとつコピーが引き立つようデザインを考え続けてきただけなの。だからこそ、自分が手がけた広告をまとめた展覧会を〈神様〉が見てくれて、「デザインがすべてちがっていて驚いた」と言ってもらえた喜びはひとしお。秋山さんにそう言ってもらえただけで展覧会をやってよかったと思いましたね。

国井 つまり、そのコピーにとっていちばんふさわしい在り方は何か、この広告はなぜ存在するのかを副田さんはいつもゼロから考えていて、その結果デザインがすべてちがうものになる、ということですね。コピーライターとしては、書いたコピーが意図したもの以上になって戻ってくる喜びもありますね。新聞広告って、コピーライターとアートディレクターのもっとも純粋なタッグのかたちなのでは。ポスターやTVもありますが究極は新聞だと思います。

副田 広告というのは合作だからね。コピーライターにとって良い仕事は、デザイナーにとっても良い仕事になるわけで。もし自分に何か言えるとしたら、なにしろ、みんなにとって良い仕事をすること。そうすると副田さんとやって良かったって言ってもらえるじゃない。それこそデザイナー冥利に尽きるよね。

国井 その結果「良いデザインだね」じゃなくて「良い広告だね」になるんですね。ちなみに副田さんがコピーを受け取ったときにいちばん考えることってどんなことですか?

副田 それはケースバイケース。半々くらいの確率で絵が先のこともあるし。でも、やっぱり力のないコピーだと苦労するね。

国井 そこそこのコピーでも、副田さんのデザインでいい広告にしてくれますか(笑)? そんなわけないですよネ。

副田 それはならないね(笑)。表面的にはいい感じにできても、芯がない言葉はどうにもならない。コミュニケーションである「広告」の基本はデザインじゃない、やっぱりまず言葉。「コピーは骨格、アートは肉体」って言い方があるけれど、両方が美しくなくちゃね。

そういえば、前田知巳くんは「副田さんの仕事は年齢不詳だ」って言ってくれるのよ。それはすごい褒め言葉じゃない? 50年も仕事してたらふつう枯れていくじゃない(笑)。名人芸で、あの人にやらせたらこうなるね、みたいなことがぼくにはないからね。

時代の空気。副田高行がつくった新聞広告100選。 会期 〜1月26日(日) 会場 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館(群馬県) 時間 09:30〜17:00 ※入館は16:30まで 休館 月曜日(祝日の場合はその翌日)※その他臨時休館有 入場料 一般210円、65際以上・大学・高校生100円、中学生以下無料

●「一倉宏×副田高行」トークショーが開催されます! 日時 1月18日(土)15:00〜17:00 場所 富岡市立美術博物館・福沢一郎記念美術館 1階市民ギャラリー ※先着100名、未就学児不可 ※聴講を希望される方はこちらよりお申し込みください。

RECOMMENDED