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今月はこの映画を観よ! 新たな“ユニバース”の露払い役、『ザ・マミー』に震えろ

予算規模や知名度の有無にかかわらず、「いま観るべき1本」を、映画ジャーナリストの久保玲子がピックアップ。今回は、いまやハリウッドのドル箱となった“ユニバース”の新たなる流れに着目。

TEXT BY REIKO KUBO

元ミス・イスラエルのガル・ガドットと女性監督パティ・ジェンキンスが組み、最強の美女戦士となるまでを描いた『ワンダーウーマン』は、6月に北米で公開されるや、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』のオープニング成績を塗り替え、約111億円の大ヒット(日本公開8月25日)を記録した。一方、ピーター・パーカーがアベンジャーズヘの仲間入りを夢見る『スパイダーマン ホームカミング』は、北米で7月7日に公開、週末興行収入約133.5億円を叩き出す上々のスタートを切った(日本公開は8月11日)。

ともに大成功を収めたこの2作には、「ヒーローもの」という以外にも共通点がある。『ワンダーウーマン』はDCフィルムズ/DCエクステンデッド・ユニバース、『スパイダーマン ホームカミング』はマーベル・シネマティック・ユニバースと、それぞれ独自の“ユニバース”に属する住人の作品、という点である(要はこの2作、強烈な覇権争いの渦中にあるライバル同士なのだ)。

マーベルとディズニー(『スパイダーマン』はソニーだが)は、『アイアンマン』や『キャプテン・アメリカ』らを動員した『アベンジャーズ』を2012年に成功させ、個々のキャラクターが同じ世界を共有しながら、一連の壮大な物語を語ってゆくシェアード・ユニバースの先陣を切った。コミックが生んだ大量のキャラクターから、前・後日譚やスピンオフなど、数限りなく作品を生み出せることに加え、TVドラマ、ゲーム、キャラクターグッズ展開など、豊富なビジネスチャンスを生むこのユニバース戦略は、いまやハリウッドのドル箱だ。

DCと組んで追い上げを謀るワーナーは、32歳の天才オタク、ジョーダン・ボート=ロバーツを投入した『キングコング:髑髏島の巨神』の公開時に、「次作では、ハリウッド版『GODZILLAゴジラ』との合わせ技となる“モンスターバース”を製作する」と、さらなるユニバースの構築を発表している。

こうしてライバルたちが次々とユニバースを形成し、成功を収めていくのを横目で見ていたユニバーサル・スタジオが、いよいよ、ハリウッド・ユニバース祭りへの参戦を表明した。その名もダーク・ユニバース。

イギリスの名門ホラーメーカー、ハマー・フィルム・プロダクション(いわゆるハマー・ホラー)によるクリストファー・リー主演の『ドラキュラ』に先駆け、ベラ・ルゴシ主演で吸血鬼の雛形を造った『魔人ドラキュラ』(31)や、哀しい末路で涙を誘った『フランケンシュタイン』(31)をはじめ、『ミイラ再生』(32)、『透明人間』(33)、『狼男』(41)、『オペラ座の怪人』(43)、はたまたクリント・イーストウッドのデビュー作としても知られる『半魚人の逆襲』(55)や、その前篇『大アマゾンの半魚人』(54)……。ユニバーサルは、サイレントからトーキー、モノクロからカラーへの移行期に恐怖の原風景を刻んだアンチ・ヒーローを総動員(つまりはリメイク)することで、ダーク・ユニバースを展開していくのだという。

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その第1弾となるのが、日本では7月28日という納涼にもってこいのタイミングで公開される『ザ・マミー 呪われた砂漠の女王』だ。

オリジナルは、数千年前のエジプトで、巫女でもある王の娘と道ならぬ恋に落ち、王の怒りによって生きながらミイラにされた高僧イムホテップが蘇り、恋人の子孫の女性を求める『ミイラ再生』(32)。『フランケンシュタイン』の怪優ボリス・カーロフが、サイレントの光と闇のなかで恐怖と悲恋のドラマをかき鳴らすこれまた名作だ。

一方、リメイク版である『ザ・マミー 失われた砂漠の女王』でイムホテップに当たる役を演じるのは、『スター・トレックBEYOND』(16)で脚光を浴びたソフィア・ブテラ(エジプト女王アマネット役)。ただし、主演はトム・クルーズ。従って本作は、スタントマンを使わないことをモットーとするトムならではの、本気アクション満載のホラー・アドベンチャーの装いと相成った。その内容は、同じく『ミイラ再生』を原作とする『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』に寄っているといえる。

秘密組織プロディジウムを牛耳る男として登場するのがラッセル・クロウ演じるジキル博士で、この男が今後、モンスターたちをダーク・ユニバースへと導くことになるようだ。

ユニバースの第1弾ということもあり、今後のシリーズへの呼び水的な演出が賑々しいが、今後の勝算は、古典ホラーのキャラクターをいかに現代に蘇らせ、ダーク・ヒーローの魅力と恐怖のドラマを拮抗させるかにかってくるだろう。第2弾となる『フランケンシュタインの花嫁』では、『美女と野獣』のビル・コンドンがメガホンを取り、『ノーカントリー』のキモチ悪さが忘れられないハビエル・バルデムがフランケンシュタインを演じるというから期待が持てる。また、ジョニー・デップが透明人間を演じることも決定済みだという。

ここはひとつ、先のジョーダン・ボート=ロバーツのようなブロックバスターにオリジナル愛を轟かせる鬼才や、ポール・バーホーベン版『インビジブルマン』で俗に徹したケビン・ベーコンのごとき人材を投入して、ぜひとも暗黒ユニバースを成功させてほしいものだ。

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『ザ・マミー/呪われた砂漠の王女』
監督 アレックス・カーツマン 出演 トム・クルーズ、ソフィア・ブテラ、ラッセル・クロウほか 配給 東宝東和 公開 7月28日(金)よりTOHOシネマズ六本木をはじめ、全国ロードショー ©Universal Pictures