森美術館で開催中の展覧会「六本木クロッシング2022展:往来オーライ!」を、お笑いコンビ・Dr.ハインリッヒのお二人と、アーティストのSUZUKA(新しい学校のリーダーズ)さんが鑑賞し、展覧会のコンセプトである「交差」をテーマにお話を伺ったPodcast番組「HILLS LIFE DAILY podacst」が配信中です。番組MCを務めた野村由芽さん(me and you)の編集後記とともに番組の見所をご紹介。
text & edit by CINRA
◆それぞれのゲストが語る「交差」とは
ゲストにお迎えしたのは、ファンタジーな漫才スタイルが魅力のお笑いコンビ・Dr. ハインリッヒのお二人と、アーティストとして、日本国内だけでなく海外からも絶大な支持を集めるアーティストのSUZUKA(新しい学校のリーダーズ)さん。MCの野村由芽(me and you)さんと本展覧会キュレーターの近藤健一さんを交え、「六本木クロッシング2022展」をより一層楽しんでいただけるようなトークをお届けしています。
自分たちに影響をもたらした「交差」として、Dr.ハインリッヒさんには、「ファンタジーエピソードトーク漫才」の原点であるコント番組や幼少期についてお話いただきました。SUZUKAさんには、メンバーや海外のアーティストとの「出会い=交差」の中で生まれた、ご自身の変化について伺っています。
また、シリーズの中盤では、ゲストが今回の展覧会で特に気になった作品をいくつかピックアップしてご紹介。ゲスト二組が感じた作品の魅力についてのトークやキュレーターの解説を、実際に作品の前で収録しました。展覧会に行く前、作品を鑑賞しながら、鑑賞後などさまざまなシーンでお楽しみいただけます。
——「世の中にはシュールのバッタモンが蔓延っている」 ——「やばいやつ」になりたかった
などなど、様々な名言が生まれた現場を余すことなくお届けしておりますので、ぜひご一聴ください!
各種プラットフォームで配信中
※各プラットフォームの読み込み状況により配信のタイミングに差異が出る可能性があります。あらかじめご了承ください
第1弾(全5話)ゲスト —— Dr. ハインリッヒ
山内幸、山内彩からなる漫才師コンビ。2004年5月結成。NSC大阪校27期生。昨年よしもと漫才劇場を卒業し、関西だけにとどまらず全国の劇場で活躍中。2022年には、単独ライブ「原液、形而上学」を大阪・東京で開催。
幸 コメント 芸術に囲まれながら「君は、この作品(漫才)をどういうつもりで作っているのかね?」の質問に答えています。 彩 コメント どこかで話したようで、どこででも話してないお話をしております。森林の中で腰掛けながらお聴き下さい。
第2弾(全5話)ゲスト —— SUZUKA(新しい学校のリーダーズ)
個性と自由ではみ出す4人組ダンスヴォーカルパフォーマンスユニット新しい学校のリーダーズのメンバー。Date of Birth:2001.1.29 【新しい学校のリーダーズ a.k.a.ATARASHII GAKKO!】 パワフルなダンスを武器に、全曲メンバー振り付けで構成されたライブが、おでんの中の大根より熱いと支持され、アジアのカルチャーを世界に発信するレーベル88risingより2021年世界デビュー。SNS総フォロワー数は800万人Over。振り付け師集団としても多数のオファーを受け、活動の幅を広げている。
SUZUKA コメント 初めてアートについて語ることができてとても楽しかったです。私なりの解釈で伝えたアート、是非聴いてください!
MCを務めた野村由芽さん(me and you)による編集後記
交差という言葉ではなくとも、子どもの頃から交差的なものを求め考えてきたように思う。料理でちいさくやけどして、冷凍庫の凍ったしめじで指を冷やした夜がなぜか忘れられないこと。仕事で頭がかあっとなったとき、しゃらりとひかる糸をつーっとたらして上からすべり降りてきた蜘蛛を見て、心が落ち着いたこと。 ものごとにのめり込むと、時に寝食も、身近な人がかけてくれたやさしさも忘れてしまいそうになるわたしの姿を心配した、一緒に暮らす人が昔、「まわりの風景が“邪魔”になるほど集中しているときは、気をつけたほうがいい」と少し悲しそうに言った。わたしは一人で生きているみたいに生きてしまっていた、と胸が苦しくなったことがあった。 けれど、食べること、眠ること、夜ひとりで散歩すること、そんな“当たり前”となっていることひとつをとっても、これまで生きた人たちの営みの交差の上にわたしたちは立っている。そして誰にも理解されていないと感じると同時に、他者の言葉や姿に、どうしようもなく助けられることもある。
Dr.ハインリッヒの幸さん、彩さんは、まだみぬ言葉と言葉の組み合わせから、少しずらした世界の見方、あり方を再構築するような漫才スタイルがとてもすてきだ。小3からの友達が「(二人の漫才は)子どもの頃からの会話そのものだよ」と言ったという話が大好き。二人はファンタジーを無理に生成しているのではなく、これまで生きてきた道のなかで、「あったらいいのに」と思ってきたけれど「まだないもの」を、今の世界に提示している。つくるものが、生きてきた時間そのものの写鏡であるからこそ二人は、世の中が形づくった「女芸人だから」や「双子だから」というあり方に回収されずに立ってこられたのではないかと思う。
新しい学校のリーダーズのSUZUKAさんは、「ヤバい」という感覚に惹かれるという話をしていた。突然パイナップルを持ってきたマニー・マークとのレコーディングも、海外のライブ経験も、メンバーと一緒にとことん楽しんで、言語のこまやかなニュアンスを超越するようなパフォーマンスの可能性に目を輝かせていた姿が印象的だ。同時に、「自分の弱いところ」を知っているからこそ、そんな自分を励ますループを繰り返しているとも話していた。一人の人間のなかにも、一枚岩ではないさまざまな面を持つ自分がいると知ることが、異なる他者のなかにある複雑性とも一緒に生きていく方法を探ることにつながるのではないかと感じた。
『六本木クロッシング2022展』は、人間と自然、さまざまな隣人、日本のなかにある多文化性にフォーカスしている。自らが生まれ育った環境、おかれてきた状況、考え方といったルーツと向きあうこと。異なる他者のルーツを知り、考え、ともに生きていくあり方を探ること。その意味で二組がおこなってきた「交差」は現代アートの根底にあるものとも重なっている。 個人の複雑さを単色で塗りつぶし、大きなものに回収しようとするよりも、複雑なものが複雑なまま出会い、共にいられる方法を探るほうが、ずっと多くの人たちが生き延びられる世界になるのではないだろうか。
Dr.ハインリッヒさん、SUZUKAさん、自身の生きてきた道に触れるような大切な話を聞かせてくださり、ありがとうございました。このエピソードのなにかの言葉が、イメージが、聞いてくださる方々の心の景色と、交差することがあればうれしいです。
野村由芽|Yume Nomura 編集者。2012年CINRA入社。CINRA.NETの編集、企画、営業に携わった後、2017年に同僚の竹中万季と共に、「自分らしく生きる女性を祝福するライフ&カルチャーコミュニティ“She is”」を立ち上げ、編集長を務める。2021年、個人と個人の対話を出発点に、遠くの誰かにまで想像や語りを広げるための拠点としてme and you, inc. を竹中と共同設立。メディア・コミュニティ「me and you little magazine & club 」を運営するほか、性について自分の温度で話しはじめてみるJ-WAVEのラジオ番組「わたしたちのスリープオーバー」(毎週金曜25:30〜放送)のナビゲーターを務める。
#podcast #ROPPONGI CROSSING #森美術館
SHARE