Sacred Foods

東南アジアと日本をつなぐ、船越雅代の「聖なる食」

梅雨の晴れ間の7月6日(木)に、六本木ヒルズで「まちと美術館のプログラム In Collaboration with 船越雅代(Food Anthology)」が開催された。人間の根源的な営みである「食」と「信仰」について、東南アジアと日本の共通点を探り表現した「A feast for Spirits(精霊たちの饗宴)」を、人びとはいかに楽しんだのか?

TEXT BY Miho Matsuda
PHOTO BY Manami Takahashi

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    1/9テーブルを準備する船越雅代

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    2/9「聖なる食」のコンセプトからプログラムはスタート

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    3/9初めて出会った人たちも、ひとつのお皿を分け合う

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    4/9アピチャッポン・ウィーラセクタン氏

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    5/9川内倫子氏

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    6/9「ソムタムタイ グリーンパパイヤとバナナの花」

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    7/9「タイ東北地方のラープ」

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    8/9デザートは「“黄金の雫” 桃のコンポート」。赤しそで染めた桃のコンポートにココナッツミルクのソースを添えて

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    9/9日暮れとともに、テーブルのグラスが輝きを増す

アジアと日本をつなぐ農耕社会の食文化

けやき坂コンプレックスの屋上庭園を会場に、一晩限りの「聖なる食卓」が出現した。このプレゼンテーションは、街全体をキャンパスに、都市や社会、文化、ライフスタイルなどのテーマをアートの視点で読み解く六本木ヒルズと森美術館の「まちと美術館のプログラム」の一環として行われた。

空間と料理を手がけたのは、サステナブルな食・文化・アート・デザインを融合した活動を展開する船越雅代氏。現在、森美術館で開催中の『サンシャワー:東南アジアの現代美術展』にちなみ、東南アジアと日本を繋げるものをリサーチする中で、アジア、環太平洋各地の農耕社会には、2種類の作物の起源が語られていることに着目した。

ひとつは、太古の人間や神的存在、とくに女性の体から作物が発生したというもの。もうひとつは、天上や地下、遠方の島などから穀物の種を盗んできたもの。どちらも環太平洋の島々に広く伝わるもので、日本の神話にも登場する。精霊に供物を捧げること、そしてみんなで集まって料理を作り、神と共に食べる「共同調理・共食」の文化も共通している。

さらに、同展の参加アーティストに「聖なる食とは?」というインタビューを行い、そのエピソードからインスパイアされたオリジナルの料理がテーブルに並んだ。夕暮れの空の下、特別にしつらえられたテーブルに招かれたのは、アーティストのアピチャッポン・ウィーラセクタン氏や川内倫子氏、女優の鶴田真由氏やキュレーター、編集者など六本木ヒルズに所縁の深い29名。夕暮れとともにスタートした宴は、それぞれの「聖なる食」の思い出を語り合いながら和やかに進んだ。

「日本の盂蘭盆会(うらぼんえ)ではないですが、蓮の華とお供物をイメージしたテーブルセッティングです。料理は各国の祭礼などで供される料理のエッセンスを取り入れ、それぞれの文脈を尊重しながら日本やアジア各国の食材を使い表現しました」(船越氏)

タイの東北地方の伝統食・ラープやコルコスープ、バナナの葉で包んだ夕顔と鱧の蒸し物、もち米をココナッツミルクで炊いたものなど、各国の伝統的な料理方法をアレンジした料理を、日本やタイ、インドネシアなど、さまざまな国のアーティストやクリエイターが分け合った。「お盆に親戚同士が集まるような宴に」と船越氏が言うように、初めて出会った人たちが、国や文化を越えて共に食べ、語り合う。夜空に月が輝く頃には、屋上庭園の水田に棲むカエルが和やかな音楽を奏でる、六本木ヒルズならではの聖なる一夜だった。

森美術館「サンシャワー:東南アジアの現代美術展 1980年代から現代まで」

profile

船越雅代|Masayo Funakoshi
料理家。東京生まれ。ニューヨークで美術と料理を学ぶ。ニューヨークやインドネシアのレストランやホテルでキャリアを積み、オーストラリア船籍の客船シェフを務め、京都の〈Kiln〉のシェフ・ディレクターを経て独立。現在は京都を拠点に活動する。「Food Anthology」代表。東アジア文化都市2016奈良市食部門ディレクター Nara Food Caravan

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