メトロポリタン美術館、グッゲンハイム美術館、エルミタージュ美術館など世界有数の美術館で行われているイベント〈#empty〉を知っていますか? 2013年ニューヨークのメトロポリタン美術館から始まったイベントで、閉館後の美術館でインスタグラマーが自由に撮影・発信するもの。美術館の新たな可能性を提示したと世界で話題のイベントが森美術館の「N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅」で行われました。
TEXT BY hillslife.jp
PHOTO BY kiichi fukuda
no images were found
美術館の楽しみが変わる「撮影OK」
〈#empty〉はアメリカの写真家・デイヴ・クルーグマン氏が、メトロポリタン美術館に企画を持ち込み、2013年に閉館日の美術館をインスタグラマーに開放したのが始まり。誰もいない(empty)美術館という話題性、インスタグラマーたちの拡散力によって〈#emptymet〉は話題となり、その後も、定期的に開催する人気イベントになりました。他にもグッゲンハイム美術館やエルミタージュ美術館、日本では東京デザイン・ウィーク、日産スタジアムなどでも開催され世界各地に広がりを見せています。今回の〈#empty MoriArtMuseum〉は、インスタグラム社が把握する限り、日本の美術館では初の試み。4月25日、閉館後の森美術館に20代を中心とするインスタグラマー19名が集合し、アーティストのN・S・ハルシャ氏、森美術館の南條史生館長も登場しました。
森美術館では、2009年の「アイ・ウェイウェイ展-何に因って?」で、鑑賞者の撮影を可能にして以降、著作権の都合や展覧会の性質によって撮影が難しい場合を除き、できる限り撮影可能にすべく作家や権利者と交渉してきました。本展でも作家からの許諾が得られたことで、展示室内のすべての作品の撮影が可能となっており、来場者が撮影した画像がSNSに多数アップされています。それに加えて今回の〈#empty〉イベントでは、参加者が貸し切りの展示室に寝転がったり、作品の前でジャンプしたりと、自由なスタイルで撮影を鑑賞、作品とコラボレートするような撮影が行われました。
「誰もいない美術館に感動した」
イベントに参加した@rs_naokaさんは「いつもの美術館の順路ではなく、最初に一番奥の部屋に入りました。他に誰もいない空間に、自分と作品だけというのは初めての体験で感動しました」。
美術大学で映像を学ぶ@naviotantraさんは「いつも美術館では目の前の作品を楽しむのであまり撮影はしないのですが、今回は自由に撮影していいとのことで、面白い経験になりました」と語りました。
当日、イベントの様子を眺めていたN・S・ハルシャ氏は「SNSには積極的には参加していませんが、例えば《ここに演説をしに来て》の制作中に、ラジオからパキスタンの首相が暗殺されたというニュースが流れ、それを作品の中に取り込んでいます。ですから、いつかインスタグラムから得たものが作品に反映されるときがあるかもしれません」。アートは体験するもの、というハルシャ氏。新たなアートの楽しみ方〈#empty〉に注目です。
#emptyMoriArtMuseum
森美術館公式Instagramアカウント@moriartmuseum
森美術館「N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅」
SHARE