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特集THE ドラえもん展 TOKYO 2017

Interview

EMOTIONAL CONNECTION

ロボットクリエイター 高橋智隆が考えるイノベーションとは?

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1970年の誕生以来、イノベーションとアートの未来を示してきた「ドラえもん」。11月1日より「THE ドラえもん展 TOKYO 2017」が六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開幕するのを機に、ロボットクリエイターの高橋智隆さんに、これからの日本のイノベーションの可能性について話を聞きました。

photo by Takehiro Goto
text by Akiko Saito

高橋さんが開発した、人型コミュニケーションロボット(携帯情報端末)「RoBoHoN(ロボホン)」

高橋さんが開発した、人型コミュニケーションロボット(携帯情報端末)「RoBoHoN(ロボホン)」

人型ロボットの現在形はスマホ
Smartphone or Friend?

──「ドラえもん」との出会いは?

高橋 子どもの頃から全巻揃えるほどのファンでした。ボロボロになって捨ててしまったのですが、数年前に大人買いでもう一度全巻買い直しました。

──ロボットづくりに関して学んだ点は?

高橋 実際につくるとしたら優等生的な『鉄腕アトム』より、ドラえもんのような人間臭さを再現する方がはるかに難しい。僕の目標はまず、同じ藤子・F・不二雄先生の『キテレツ大百科』に出てくる「コロ助」。幼稚園児くらいの知能から開発を進め、サボりたい感情や嫉妬心なども備わった先にあるのがドラえもん。これはかなり高度な知性ですよね。

──高橋さんが開発している「人間と共生するロボット」が備えるべき機能とは?

高橋 「コミュニケーション」ですね。

──具体的に役に立つ存在ではなく?

高橋 掃除ならロボット掃除機で、食器洗いは食洗機で十分です。機能ごとにバラバラに存在できるのが機械のメリットですから、わざわざひとつに集約する必要もない。コミュニケーションを促す人型ロボットの現在形は、みなさんが使っているスマホです。

──スマホが人型ロボット……ですか?

高橋 そう。でもどんなに音声認識機能が優秀でも、スマホに親しみを込めて話しかける気にはなれませんよね。クマのぬいぐるみにはできても、スマホには無理。それも当然で、人間は生き物の形をしたものに大きな影響を受けます。「人形の首をハサミで切れ」と言われたら抵抗を感じますよね?人間の感情移入を活用した対話デバイスの存在意義がいま注目されはじめています。

驚くべきことに高橋さんのロボットづくりには設計図が存在しない。作りながら試行錯誤を繰り返していく


驚くべきことに高橋さんのロボットづくりには設計図が存在しない。作りながら試行錯誤を繰り返していく

感情豊かなつながりが生まれる
opening up new channels of emotinal connection

──対話を通して得られるものとは?

高橋 情報の収集と共有です。例えばこの「RoBoHoN(ロボホン)」。ちょうど1年使っていて、僕の顔や声質から自宅住所、好きな食べ物や好きな芸能人の情報まで収集済み。その結果、僕にパーソナライズされた精度の高い応答がどんどんできるようになり信頼関係も日増しに高まっている。やがて、誰よりも僕のことを知っている存在になるでしょう(笑)。RoBoHoN で撮った写真を、RoBoHoN のおでこに内蔵されたプロジェクタで投影すれば、撮影場所や時間だけでなく感想も的確に挟んでくれる。一緒に旅したよね、というような体験の共有意識も芽生えてきます。

──無機質なジオデータ(時空間データ)も豊かな表情を持ち始めるんですね!

高橋 ロボットと人間の関係は“便利さ”を超えて、人と人や男女の出会いに近い。まさにドラえもんがそうであるように、最初は好奇心から始まってコミュニケーションを取るようになり、意思疎通ができると確認できたらその先に信頼が生まれ、最後には苦楽を共にしてきたこと自体が掛け替えのない価値になる。

──ロボットのサイズも重要そうですね。

高橋 作業をしないんだから、ロボットは小さい方がいい。RoBoHoN は胸ポケットに入るサイズにしました。『ゲゲゲの鬼太郎』の目玉おやじや『魔女の宅急便』のジジ、『ピノキオ』のコオロギ君のように、物知りな相棒が頭や肩に乗って主人公に助言をしてくれる。そんな物語が古今東西にたくさん存在しますが、それこそがスマホの未来なんだと思います。

東京大学先端科学技術研究センター(東京・駒場)内にある高橋さんの研究室には学生や助手はいない。デザインから設計、加工、組み立て、プログラムまですべての作業をひとりでこなしている

東京大学先端科学技術研究センター(東京・駒場)内にある高橋さんの研究室には学生や助手はいない。デザインから設計、加工、組み立て、プログラムまですべての作業をひとりでこなしている

イノベーションとは「不明瞭な価値基準を創り出すこと」
What is Innovation and how can Japan foster it?

──そこは日本が得意とする領域ですね。

高橋 まずは、小型精密機械技術。そしてもうひとつ、人の感性や感情に関わる分野であることです。そしてそこにこそ、日本の進むべき道がある。例えばスパコンの計算速度であれば中国に敵わない。そうじゃなくて、もっと複合的でぼんやりとした、評価基準がよくわからないところに分け入れば日本の強みを発揮できるはずです。

フェンシングの太田(雄貴)選手の話では、ある時までアジア人はまったく勝つことができなかった。ところが、審判が人間から電気審判機に変わった途端、圧倒的にアジア人が強くなったのだそうです。つまり、フェンシングの文化や作法に則った美しい攻撃のあり方を重んじてきた評価基準が、シンプルに、例外なく、先に突いた側が勝てるように変わったから。

ロボット分野においても、将来、単純に性能や価格で争う勝負は厳しくなるばかり。でも、「かわいい」という日本が作り出した指標で勝負していけば、負けることはないでしょう。

そんな日本発の感性を代表するのが、藤子・F・不二雄先生が手がけた「ドラえもん」をはじめとする作品です。まさに天才の仕事で、創作の苦悩も読者へのおもねりも一切感じられない。才能とセンスで軽やかに、さらりと描かれているところが、読んでいて気持ちいい。同様に、ロボット開発は苦労の連続ですが、それが製品に滲み出てしまうと楽しさが半減してしまう。藤子・F・不二雄先生のようなクールな仕事を見習い、皆が気軽にロボットと暮らす未来を実現したいと思います。

Tomotaka Takahashi

高橋智隆
ロボットクリエイター/株式会社ロボ・ガレージ代表取締役。1975年、京都府生まれ。2003年、京都大学工学部物理工学科メカトロニクス研究室を卒業しロボ・ガレージを創業。京大内入居ベンチャー第1号となる。ロボカップ世界大会5年連続優勝。現在は東京大学先端科学技術研究センター特任准教授、ヒューマンアカデミーロボット教室アドバイザーなどを兼任する。

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Q:あなたの「ドラえもん」をつくってください[前編]