個人の生活空間から都市、社会までを広く視野に入れ、デザインによる変革を実践し続けたコンラン卿(1931〜2020)の人物像に迫る初めての展覧会が、東京ステーションギャラリーにて開催中。この機会に、ヒルズライフのアーカイブに残る特集記事を紐解き、コンラン卿が信念とした〈より良い社会を実現するためのデザインの力〉について考えてみたい。
text by Megumi Yamashita
photo by Haruko Tomioka
movie by HILLS LIFE DAILY
テレンス・コンラン卿が亡くなったのは2020年9月こと、コロナ禍が終息し始めた頃だった。コロナ後、世界が大きく変化したように、コンラン亡き後のデザイン界にも、いまだに巨星を失った空洞感がある。ヒルズライフでは、そんな巨星が亡くなる3年前、自邸を訪ねてロングインタビューを行った。
この時に語られたことを改めて読み返すと、そこには空洞を満たすような金言が散りばめられている。戦後の復興期という混迷の時代に「デザインの力で、人々の暮らし、そして社会をよりよくしたい」という信念を抱き、コンラン卿は生涯それを貫いた。地域の活性化や持続可能な暮らしや仕事のあり方を追求するなど、常に時代を先駆けてきた。そして、その信念を次世代につなぐことが、彼の願いだった。素敵な暮らしに止まらず、より良い社会を実現させるため、「デザインの力は不可欠である」というコンラン卿のメッセージ、今一度、お届けしたい。
連載|コンラン卿からのメッセージ❶ デザイン界の巨匠、コンラン卿に聞く、暮らしと人生のヒント❷ コンラン卿が世界でいちばん大切にしている場所はどこですか?❸ 「アークヒルズクラブ」に息づくコンラン・デザイン
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