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Christmas Hills 2025 2

Cozy German, or Gourmet?

アットホームなドイツスタイル? それともこだわりグルメ?——ヒルズのふたつのクリスマスマーケットの過ごし方

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19年前にヒルズのクリスマスマーケットは、アットホームなドイツスタイルをお手本として六本木ヒルズでスタートしました。当時から出店者として参加し、3年前からはグルメにこだわった麻布台ヒルズのクリスマスマーケットにも出店するシェフ、マーカス・ボスさんに話を聞きました。

Photo by Mie Morimoto
Text by Mari Matsubara
Edit by Kazumi Yamamoto

今年で3回目となる麻布台ヒルズのクリスマスマーケット! 中央広場に大きなモミの木のツリーが立ち、中央広場のアーチ状のゲートをくぐるとクリスマスオーナメントやリース、雑貨やおもちゃの店、手軽に食べられるテイクアウトの料理やドリンクの店など17店舗が並んで初日から大賑わいです。

ヒルズのクリスマスマーケットは、19年前に六本木ヒルズで開催されたことに始まります。森ビル担当者がドイツのクリスマスマーケットを視察してその魅力に惹かれ、「この雰囲気をそのままヒルズで再現したい」との思いがきっかけでした。その際に出店者の一人として参画していただいたのが、北海道で活躍するドイツ人シェフのマーカス・ボスさんでした。

マーカス・ボス|Markus Bos  
1976年ドイツ生まれ。ドイツやイギリスの星付きレストランでフランス料理の修業をした後、ロンドンでホテルマネージメントを学び、2002年に日本人の妻と一緒に北海道に在住。2005年から料理教室やケータリング、食材の製造販売を始める。夏季週末限定の「MaY MARCHE(メイマルシェ)」を主宰し、期間中400種類もの北海道産野菜を販売。開店前に行列ができるほどの人気を誇る。シェフとしてさまざまなプロジェクトに参画し、商品プロデュースも手がける。

「一説にはクリスマスマーケットはドイツで始まったとも言われていて、大きな町から小さな村まで地域ごとにそれぞれ独自のクリスマスマーケットが開かれます。その雰囲気を受け継ぐ六本木ヒルズのクリスマスマーケットには、ドイツ製のおもちゃやオーナメントを販売するブースを設けたり、食べ物や飲み物もドイツ風のものが厳選されています」

麻布台ヒルズのクリスマスマーケットでマーカス・ボスさんがプロデュースする〈ジャーマン クリスマス スタンド〉(右)と〈プレッツェル キング〉(左)は隣同士。

マーカスさん自身も毎年、六本木ヒルズのクリスマスマーケットに〈フランクフルターハウスマイスター〉を、本格的なグルメにこだわったオーセンティックな麻布台ヒルズのクリスマスマーケットには〈ジャーマン クリスマス スタンド〉と〈プレッツェル キング〉の2店舗を出店している。いずれもドイツのクリスマスマーケットでは必ず見かける飲み物と食べ物を提供している。

「僕はフランクフルト出身ですが、ドイツ国内の地域によってクリスマスの食べ物や飲み物は少しずつ違います。フランクフルトはなんと言ってもリンゴ酒が有名で、たくさんの種類のアップルワインが生産されます。赤ワインを使ったグリューワイン(ホットワイン)はご存じの方も多いと思いますが、ここではぜひアップルグリューワインを試してみてください」

ドイツといえば「クリスマス アップルワイン」。ぜひ試してみて、とマーカスさん。

アップルワインはリンゴから作られるお酒。フランスのシードルに比べると発泡はほとんどなく、独特の酸味がある。爽やかな喉ごしで、冬ならこれに砂糖やスパイスを入れてホットにして飲むのが定番だ。

「赤ワインで作るグリューワインももちろんクリスマスマーケットに出ますが、フランクフルトの人にとってアップルワインはより身近な存在。夏なら冷やして、酸味が強ければ炭酸で割って、スポーツドリンクみたいに飲みます(笑)。フルーティーで飲みやすいから女性に人気ですね。アップルグリューワインも香りがよく美味しいので、飲みすぎに注意が必要です!」

行列必至の発酵バターのプレッツェル

麻布台ヒルズの〈プレッツェル キング〉で販売している「発酵バタープレッツェル」は中が柔らかいソフトタイプ。バターの香りがふんわりと漂い、飽きがこない。650円。

寒い夜のクリスマスマーケット巡りに欠かせないグリューワイン。そのお供はなんと言ってもプレッツェルだ。〈プレッツェル キング〉で売っているのはいわゆる「ソフトプレッツェル」と呼ばれるもので、パンのように柔らかいタイプだ。

「去年、ドイツ直輸入の発酵バターのプレッツェルを初めて麻布台ヒルズのクリスマスマーケットに出したら行列ができたほど大好評でした。なので、今年はプレッツェル専門のブース〈プレッツェル キング〉を別に設けました。外側はパリパリ、中はふっくらと柔らかいんです。たっぷり含まれている発酵バターの香りがフワーっと立ち上がり、ずーっと食べていたくなる美味しさ。ドイツでは子供からお年寄りまでみんな大好きです。発酵バターのプレッツェルを食べられるのは、日本ではここが最初ではないでしょうか? まだ味わったことがない方には、ぜひ召し上がってみていただきたいです」

麻布台ヒルズの〈ジャーマン クリスマス スタンド〉で販売している「ジャーマンブラート ヴルスト ザワークラウト添え」850円。ドイツのクリスマスマーケットでは定番の食べ物。

他に、牛肉をビールで長時間煮込んだ「ドイツ式ビーフシチュー」も必食。ドイツ風のソーセージやオーストリアの白ソーセージには、ドイツから取り寄せたザワークラウト(キャベツの酢漬け)が添えられている。

「シチューやグーラッシュは北海道の牛を、僕のレシピで北海道の会社に作ってもらっています。野菜もすべて北海道産のものを使っています。日本人がラーメンやカレーが好きなように、ドイツ人もシチューやスープが大好き。温かい汁物を食べたくなるのは共通していますね」

五感でクリスマスの雰囲気を堪能してほしい

19年前からヒルズのクリスマスマーケットに参加してきたマーカスさんにとって、クリスマスマーケットはどのように過ごすものなのか、聞いてみた。

プレッツェルとリンゴのオーナメントの飾り付けが可愛い。

「ドイツ人にとってクリスマスマーケットは、家族で出かける場所です。僕も子供の頃、両親に連れられて行った思い出があります。いろんな店が並んでいて、そこに漂うグリューワインのシナモンの香りや、砂糖の甘い香り、オレンジやレモンの香り、モミの木の匂い、ソーセージの焼ける匂い、アーモンドをローストした香ばしい匂いなど、日常生活では感じない特別な香りがあたりに漂っている。僕にとってのクリスマスマーケットは、まずその香りの記憶が大きいです。あぁ、クリスマスだなーと感じる瞬間です」

クリスマスマーケット全体に漂う香りが一番記憶に残っている、と話すマーカスさん。


 

「そして、毎年同じ店で1個ずつオーナメントを買ったり、おもちゃの店やガーデニングの店を覗いたり。プレッツェルを片手に、大人はグリューワインで暖をとり、子供はアップルジュースを飲みながら、散策します。毎年ほぼ同じことをするわけですが、友だちと会えたり、一年の出来事を思い返したり、子供の成長を感じたり、いろんな思いが湧き起こるんです」

ひつじのオーナメント。

「麻布台ヒルズのマーケットは屋外にモミの木が立ち、広場の周りに三角屋根の可愛らしい小屋がブースになっていて、村みたいな感じが素敵ですよね。六本木ヒルズも本来のドイツのクリスマスマーケットの雰囲気をとても上手に再現していると思います。あまり大規模すぎず、あのぐらいのサイズのほうがアットホームでハートウォーミングな感じがします」

麻布台ヒルズと六本木ヒルズのクリスマスマーケットは12月25日まで。家族づれやカップルで、仕事帰りに、ディナーに行く前の待ち合わせに、ふらりと立ち寄って雰囲気に浸り、温かい気持ちになれるイベントだ。


麻布台ヒルズ クリスマスマーケット2025
期間:開催中〜12月25日(木)
時間:11:00〜21:00
場所:麻布台ヒルズ 中央広場


六本木ヒルズ クリスマスマーケット2025
期間:開催中〜12月25日(木)
時間:11:00〜21:00
場所:六本木ヒルズ 大屋根プラザ


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