「日本中から注目を集める、元気な商店街と朝市がある」。そんなうわさを耳にして、向かった先は三重県・桑名市。江戸時代から名をはせる「ハマグリ」が絶品で、さらに女性や高校生のプロジェクトが新しい鋳物を生み出しているーー。
そんな情報も気になって、桑名をめぐる旅に出かけました。
Text by Yoko Takeuchi / Photo by Yuna Iwase
朝から5000人がにぎわう 「三八市」
まず訪れたのは、毎月3と8のつく日に「三八市」が開催されている、桑名寺町通り商店街。開催日に合わせて月曜日の朝9時30分ごろ商店街へ到着すると、平日の朝だというのに約200m続くアーケードには買い物客がぎっしり。あちらこちらから聞こえてくる威勢のいい掛け声や、おしゃべりを楽しむお客さんの声で、活気にあふれていました。来客数は、なんと約5千人。三重県で唯一「全国がんばる商店街30選」(経済産業省/2015年)に選ばれたというのも納得です。
もともと桑名は東海道の宿場町で、城下町でもあり、お寺が多く存在することから、“あまたの人が行き交う町”だったといいます。そんな地で60年以上続いている「三八市」は、それ自体が町の名物。商店街をさらに活性化していこうと、5年ほど前からは商店街の若手メンバーが中心となって、若い人々やファミリーに向けた「十楽市」もスタート。こちらは毎月第3日曜日に開催され、子供も楽しめるイベントやワークショップなど様々な体験ができ、毎回好評なのだとか。
「三八市」で甘いも辛いも食べ歩き
そんな三八市をそぞろ歩けば、左右から漂ってくるのは、しぐれ煮や大判焼きなど食欲を刺激するにおい。それもそのはず、現在「三八市」に参加しているお店は、野菜や魚介類、お惣菜、和菓子、パン…と、さまざまなジャンルが合わせて45軒ほど。朝ごはんにぴったりなものも調達できますよ。
なかでも心惹かれたのは、貝柱のおにぎりや、天むす、桑名産もち小麦のパン。小腹を満たすなら、桑名産のたけのこコロッケや黒シジミのコロッケもおすすめ。特産品の焼きはまぐりも気軽につまめてしまいます。
甘いものなら、老舗和菓子店による最近のヒット商品「みたらしソフトクリーム」を。甘じょっぱいキャラメル味のような美味しさでペロリと食べてしまいました。のどが乾いたら、昭和40年生まれの微炭酸クリームソーダ「スマックゴールド」が桑名っ子の定番ですよ。
桑名のハマグリのおいしさに感嘆!
ハマグリといえば、関東では千葉の九十九里が知られていますが、桑名のハマグリも有名な存在。ならばと足を伸ばしたのは、木曽三川のひとつ、揖斐川の河口に面した「はまぐりプラザ」。こちらの食堂「はまかぜ」では、目の前の港で水揚げされたハマグリを味わうことができます。
今回選んだメニューは、焼きはまぐり、はまぐり磯辺揚、はまぐりフライなどがセットになった「赤須賀定食」。さっそくハマグリを網で焼いて開いてきたら、「醤油はいらないよ」というお店の方のアドバイス通り、アツアツをそのままぱくり。口にいれたらすぐ分かりました、「今まで食べてきたハマグリとは違う!」と。プルっとやわらかくて、塩気がマイルド。甘みやミルキーさを感じる旨みもたっぷり、まさに美味。
聞けば、江戸時代には将軍への献上品、現在は高級料亭に愛されているのが桑名のハマグリ。九十九里などの外洋で育つと身が少しかたくなるのですが、こちらは岐阜や長野からの恵み豊かな木曽三川の真水と、おだやかな伊勢湾の海水とが混ざる汽水域。そのため身がふっくらとやらわらかく、塩気もほどよくなるのだとか。同行していたカメラマンと2人で撮影しながら、「ハマグリがこんなに美味しいなんて…」、とついつい食べる手が止まりませんでした(笑)
ちなみに、焼きはまぐりに適したサイズは4〜5cm。それ以上になると貝柱が太くて貝が開きにくくなるのよと、お店の方が教えてくれました。
戦国時代から継承する技術と、新感覚のプロダクト
桑名でもうひとつ有名なもの。それが「マンホールのふた」ってご存知でしたか?市内には20社ほどの鋳物工場があり、うち数社からマンホールのふたが全国の市町村へ出荷されているそうです。今回は、そのひとつ「桑原鋳工」の工場見学に参加してきました。
実は桑名は、古くから「東の川口、西の桑名」と呼ばれ、日本の二大鋳物産地のひとつ。戦国の鉄砲づくりの時代から伝統的な技術が継承されています。そのためか、今も人の手による作業が多く、思ったより間近で工程を見せてもらえるのには驚きました。しかも、マンホールといった大きな鋳物を大量に作る現場なので、熱も光も煙も音も、とにかくダイナミック。特に、約1530度で溶解された鉄が放つ圧倒的な光と、大量に飛び散る鮮烈な火花はド迫力でした。
それから、ショールームへ移動。工場見学の興奮さめやらぬところ、まず目を奪われたのは、人気商品でもある全国のミニチュアマンホールのコースター。
(寺町通り商店街で見かけた桑名のマンホールの絵柄もしっかりありましたよ…!)
写真提供:桑名市
他にも、鋳物の定番・鉄瓶や、三重グッドデザインに選ばれたスタイリッシュな蚊やり器、ドラマ「高校生レストラン」のモデルとなった県内の高校と商品化したモダンなお鍋など商品がずらり。鋳物で個性豊かな商品を仕上げるには、高い技術力があってこそ。その技術を活かし、社内の女性スタッフや外部のデザイナーが、「今の生活で自分たちが普段使いしたいもの!」を生み出しているそう。今後のラインナップも楽しみです。
後編レポートでは、桑名でおすすめのお土産をさらにご紹介します!
旅する桑名市
Teramachidori Shotengai
寺町通り商店街3と8のつく日の朝に開かれる「三八市」では、約200mのアーケード街に45軒ほどの露天が並び、威勢のいい掛け声が飛び交う。第三日曜日には「十楽市」「寺町マルシェ」も開催中。商店街の中には、桑名の名産品を集めた「くわなまちの駅」もあります。
Hamaguri Plaza
はまぐりプラザ
地物のハマグリが水揚げされる赤須賀漁港の複合施設。揖斐川・長良川を一望できるデッキもあり、食堂「はまかぜ」では、焼きはまぐり定食や、はまぐり丼、はまぐりうどんなどが堪能できます。
Kuwahara Chuko
桑原鋳工
全国のマンホールの蓋から、鉄瓶やスキレットなど生活道具、インテリアプロダクトまで手がける鋳物メーカー。工場見学&体験教室では、ぐいのみ・小皿・ミニチュアマンホール作りを楽しめます。
2018年4月、日本各地の魅力を伝えてきた『旅する新虎マーケット』は
「新虎通り」から虎ノ門ヒルズ、アークヒルズまでエリアを拡大し、
『旅するマーケット』へと生まれ変わりました。
その中心となるのは日本各地の旬の食材や郷土料理を食す場所「食べる場」、
地域に根付く繊細で丁寧なものづくりを体験できる場所「創る場」、
そして新鮮な地域の食材や加工食品が買える場所「市場」。
2020年東京オリンピック・パラリンピック開催に向けて、
国内外からの注目が高まり続ける東京。
その東京を代表する都市空間を舞台に、
日本各地の新たな価値を創造し、発信します。
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