PLAYCUBE IN OSAKA UMEKITA PARK
子どもも大人も豊かに生きるために。探究型学習施設「BørneLund PLAYCUBE」が目指すこと|ボーネルンドの取り組み ⓮
世界の教育玩具の輸入やあそび場の開発・運営を事業とする〈ボーネルンド〉が、全く新しい施設を大阪うめきた公園内にオープンしました。ここは学校? あそび場? 「PLAYCUBE」を通じて追求していきたい社会のあり方について、中西みのり社長が語ります。
PHOTO BY AZUSA TODOROKI (BOW PLUS KYOTO)
TEXT BY MARI MATSUBARA
——JR大阪駅直結の都市型パーク、うめきた公園内に「BørneLund PLAYCUBE」が2024年9月6日にオープンしました。ここはどんな施設なのですか?
中西 〈ボーネルンド〉はこれまで屋内型のあそび場「キドキド」や、屋外あそび場を併設した公園「プレイヴィル」、ボートレース場に「BOAT KIDS PARK モーヴィ」などを開発・運営してきましたが、今回の「PLAYCUBE」は全く新しい業態になります。ひと言で申し上げると、子どもたちが「好きなこと」を見つけてそれを探求していくことを後押ししていく施設です。フリースクールやオルタナティブスクールですかと聞かれますが、「PLAYCUBE」はそれらとは少し違います。我々は教育者ではないので、「探究型学習施設」と説明しています。3フロアあり、1・2階は学びとあそびのスクール&ラボ、3階には来春オープン予定のカフェを準備中です。
——具体的にはどんなことをするのでしょう?
中西 学校という枠組みにははまらないけれど、好きなことも、やりたいこともある。得意なこともある。学習意欲はあるけれど、お友だちとの関係に悩みがあったり、何となく足が向かない……。いろんな子がいます。そんな子どもたちのために「PLAYCUBE」はやりたいことを研究できる場所や、新しい出会いを用意します。さまざまな機会を通じて、自分の興味や得意なこと、自分らしさを発見してもらえればと考えています。
たとえば「ものがたり」に出会ったら、想像が広がり、感じたことや考えたことを自由に表現して楽しむ。実は、これは「国語」の学習の本質です。でもここでは国語の学習能力の獲得を目的とはしません。自由に楽しめる場所が「PLAYCUBE」なのです。
アフタースクールでは、さまざまなプロフェッショナルとの出会いを提供します。多様なスキルを持つ方々から、面白いことを教えてもらう、新しいことにチャレンジしてみる、そんな機会を作ります。ボーネルンドは創業から47年。教育関係はもちろん、スポーツ、伝統文化、アート、デザイン、モノづくりなど多彩な分野のプロフェッショナルとの繋がりがあります。子どもたちにとっても大人にとっても、素晴らしい刺激になると思います。
——「PLAYCUBE」のような施設をつくろうと思い立ったのはどんな理由からですか?
中西 文部科学省の2022年の調査では、小中学生の不登校児は30万人、高校生まで入れると60万人と言われています。勉強したい気持ちはあるけれど集団で学ぶことが苦手とか、興味のあることに一人で没頭したいとか、いろんな子どもたちのニーズの受け皿が必要だと考えました。「多様性の称賛」をプロジェクトのテーマに掲げ、子どもひとり一人の気質やキャラクターを尊重し、その子がやりたいことを応援しよう、その先にみんなが生きやすい社会をつくっていこうというのが私たちの理念です。「PLAYCUBE」がそのための第一歩であり、気づきの場になれば良いなと思っています。
中西 さらに言えば、「PLAYCUBE」には大人の価値観を変えていくという目的もあります。通学しているか不登校かで子どもを判断するのではなく、その子が本来持っているアビリティをきちんと評価し、伸ばしてあげられる大人を増やしていきたいのです。そのために、大人向けのセミナーやリスキリングの機会もたくさん設けていく予定です。内容は子育てや教育に関することばかりでなく、大人自身が知的好奇心や自尊心を満足させ、自分を発見できるようなプログラムを考えています。学ぶことや、新しいことに挑戦するのは楽しいということを、まずは親御さんに感じてほしい。その豊かさが、子どもに対峙するときの心の柔軟性に繋がります。お父さんやお母さんが楽しく学んでいる姿を、子どもはしっかりと見ていますから、良い影響を与えるでしょう。親子一緒に学べるような企画も検討しています。
——「探求型施設」としての開校は2025年4月とのことですが、それまでの間はどのような運営になりますか?
中西 「PLAYCUBE」という施設を知っていただくためのワークショップを数多く行っていきます。オープニングでは、日光江戸村さんとのコラボレーションで、はた織りやうちわづくり、つまみ細工など「江戸のものづくり」体験していただきました。一つひとつの細かな作業を積み重ね、想像を越える美しいものを作り上げる過程で、手先を使った作業が得意な子どもは、作品ごとに自信を重ねていきます。それが大きな自信となり、人に伝えたくなるのです。ものづくりから運動プログラムまで、多種多様なプログラムをご用意し、皆さんに体感していただけるよう工夫をしています。
——スタッフにはどんな方がいますか?
中西 「PLAYCUBE」の共育アドバイザーとして、岩崎千佳先生を迎えました。岩崎先生は以前、大阪教育大学附属平野小学校の副校長を務められたとき、文部科学省研究開発指定校として「未来そうぞう科」を創設し、探求型学習を実践されていました。子どもが自発的にテーマを見つけて探求し、大人が並走する。子どもの可能性を真ん中に据えて、尊重し、とにかく楽しく、大人も一緒に学んでいくという姿勢やメソッドに共感しました。先生と私たちボーネルンド、お互いが持っている経験や知見を融合し、「学び」⇄「あそび」を実現するパートナーとして、お手伝いいただけることになりました。そのほか、「キドキド」などで実績を積んだ有能なプレイリーダーたちが子どもたちを見守ります。
——大阪に「PLAYCUBE」をオープンしたことの意義はどうお考えですか?
中西 大阪はイノベーティブなことに寛容な街だと思うのです。JR大阪駅前という絶好のロケーションに「うめきた公園」という大きな緑地をもうけ、その周りにはインキュベーション施設や、テクノロジーに特化した文化施設を建設するなど、新しいムーブメントが起きています。そのような場所に新しいスタイルの学びの施設「PLAYCUBE」が開業できたことをとても嬉しく思っています。この公園でゆっくりと過ごす延長線上に「PLAYCUBE」があり、家族でカフェに来たり、セミナーに参加したり、子どもたちには放課後にふらりと立ち寄ったりしていただければ良いなと思っています。
——10月には東京・六本木でイベントも実施されるそうですね?
中西 都心部で思いきり体を動かしたり、大きな声を出したりできる広々とした屋外環境は少ないことから、毎年楽しみにされている方も多い「PLAYDAY」ですが、今年も六本木ヒルズ アリーナで10月13日(日)、14日(月・祝)に行います。「あそびでからだが動き出す」をテーマに、子どもから大人までがのびのび思い切り体を使って遊べるあそび場をつくるほか、今年はさらにプロの方にもお越しいただき、その楽しさを追求できるプログラムも加わりました。たとえば、体操競技のオリンピアンに来ていただき回転の動きを教えてもらったり、JFAと共同開発したボール遊びプログラムを実施したり。LDHが運営するダンススクールEXPGとのコラボプログラムも初お披露目します。
「大人のwell-being」は結果として「子どものwell-being」につながります。この機会に体を動かすことの楽しさに触れて、運動の大切さに改めて気づいていただけるきっかけとなればと思っています。
また、ヒルズカフェ/スペースでは、赤ちゃん向けのワークショップ「赤ちゃんとPLAYTIME」を実施します。あそび道具を熟知したママインストラクターが、発達とあそびをレクチャーしますので、ここもプロとの接点を体感いただける場になっているかと思います。コミュニティを求めるママたちに心地よい時間とつながりをご提供しています。
人間が生きていく上で必要な問題解決力や協調性、創造性は、子どもの時に「あそび」を通じて養われます。〈ボーネルンド〉はあそびを通じて学びを得るという体験を、「PLAY CUBE」をはじめとする様々な施設や機会を通じて、子どもたちと大人のみなさんに提供していきたいと考えています。
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