「研究所の外に出て、さまざまな人や地域に目を向けよう!」「異なる複数の視点を手に入れて、新しいアイデアを育もう!」をモットーに、多様な研究を展開するMITメディアラボ。その活動に見る、クリエイティブであり続ける秘訣とは?
TEXT BY HILLSLIFE.JP
PHOTO COURTESY OF JOI ITO
伊藤穰一(MITメディアラボ所長)が提案する
変化の時代を生き抜くための「9つの原則」
Practice over theory
理論ではなく、実践に基づくこと。Emergence over authority
専門家ではなく、クラウド(人々)に向かうこと。Resilience over strength
強さではなくしなやかさを持つこと。Disobedience over compliance
服従ではなく、反抗すること。Pull over push
「押す」のではなく「引く」こと。Compasses over maps
地図ではなく、よいコンパスを持つこと。Systems over objects
モノではなく、システムに焦点を合わせること。Risk over safety
安全ではなく、リスクを取ること。Learning over education
教育ではなく、学習に焦点を当てること。
理論ではなく、実践に基づくこと
上に掲げた「9つの原則」は、変化の時代を生き抜くために、MITメディアラボの所長 伊藤穰一が提案する行動の指針だ。ここに示されているように、MITメディアラボは理論より、もの作りなどを通して実際に世の中にインパクトを与えるプロジェクトに重きを置いている。「生きた経験を現場で重ねて、理屈や言葉に変換できない経験を記憶につなげることがイノベーションには不可欠。自分の身体で学ぶ大切さをもっと見直すべきだ」と伊藤は言う。
仲間をつくり、一緒に作業にあたる
現場を目の当たりにすると、みんなが直面している問題や求めているものを理解できるようになる。あるいは、得意分野を持った人たちが集まって世界各地のコミュニティに出かけて行き、イノベーションの力で人々を助けることもできる。財政破綻したデトロイトの街で行なったプロジェクトでそのことを痛感しました、と伊藤。「コミュニティの人たちと一緒になってデザインするコー・デザイン(Co-design)こそが、地域や社会を活性化させていく鍵になると思います」
答えだけでなく、新しい問いを探し続けよう
「セレンディピティ」という言葉がある。「ひらめき」とか「偶然の幸運」と訳されがちだが、その特徴は「探していないものを見つけられること」。だからといって成り行き任せというわけではなく、心の持ち方や視野の広さ次第でチャンスを作り出せることを伝える言葉だ。「MITメディアラボが得意とするのも、一緒に考え、コラボレーションする中で、答え——ひいては、取り掛かる前には知り得なかった問題や問いそのもの——を模索することです」と伊藤。MITメディアラボが、「問い(課題)を探し求める答えの集まり」と呼ばれる所以だ。
マサチューセッツ工科大学メディアラボ|MIT Media Lab
米国ボストンにある、ノーベル賞受賞者を多数輩出してきたマサチューセッツ工科大学(MIT)建築・都市計画スクール内に1985年に設立された研究所。表現とコミュニケーションに利用されるデジタル技術の教育・研究を専門に、現在約150名の大学院生が所属、25の研究グループが350以上のプロジェクトに取り組む。
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