ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回のテーマは、光で感じる春の色です。
STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
春色の浮力を使って軽く明るく
春分が過ぎ、やっと春らしくなってきたと思ったら、再び寒くなったり。ジェットコースターのような気温差の日々ですね。でも、太陽の日差しは着実に春の光へと変わってきています。そこで今回は、光で感じる春色に着目し、今季注目のサックスブルーとカーキをピックアップ。このテーマに至ったきっかけは、1月に大阪の中之島美術館で観た「テート美術館展」。展覧会は光をテーマに、16世紀の絵画から現代アートまでを紹介。同じ色でも光によって見えてくる色や景色が異なってくるなど、なかなかに興味深い内容で。そういえば、世界中をロケで飛び回っていた頃、同じ色の服でも、ハワイに持っていくのと、パリで撮影するのとでは全く印象は違っていたなぁ、というのを思い出しました。太陽の光の下と、室内の照明の下とでも色は違って見えます。今回集めたのは、冬よりも少し強くなってきた春の光を浴びてこそきれいに見える色。「身も心も軽やかに」が私の今年のテーマ。春色の浮力を使って、軽く明るく気持ちをあげていこうと思います。
地曳いく子が指南する
春の日差しに映えるカラーアイテムの心得
❶ 色は光のリフレクション
この春に気になるブルーは、ペールともくすみとも違う、春の日差しに映える軽やかなサックスブルー。また、カーキといえば秋を思い浮かべがちですが、春のカーキは別物。秋冬物は厚手のウールだったりニットだったりと、光を吸い込む系のマテリアルがメイン。ですが、光を跳ね返す素材が多く登場するが春夏。春のカーキは、光のリフレクションとライトな素材で、実際の色よりも白さや軽やかさがアップ。日差しの角度や強さ、服の素材感で、同じ系統の色でも季節によって印象が違ってきます。ひと言に、サックスブルーやカーキといっても幅があるので、自分の似合うカラーを見つけ、色で楽しむ素敵な春をスタートさせてください。
❷ スレッドカウントの高さが決め手
色のリフレクションに影響するのが、スレッドカウント(1インチ四方に織り込まれる糸の本数)の高さ。スレッドカウントが高いほうが、光沢感が増します。夏であれば、目があらくカジュアルな生地でも構いませんが、この春のサックスブルーやカーキは光沢感があってこその色。たとえ生地がくたっとしていても、どこか張り感や光沢感があるだけで、違って見えます。それがスレッドカウントの高さなのです。カーゴパンツが流行っているからと、本気のカーゴに大人は手を出してはいけません。大人のカジュアルは、あくまでもカジュアル風味であって、どこかにラグジュアリー感を潜ませるのが鉄則。服選びに迷ったら、スレッドカウントが高くてお値段が高いものを選ぶ、というのも今年の春のひとつの選択です。
❸ シャツは第3ボタンまでの間隔が勝負
春になるとワードローブとして活躍するのがシャツ。今回もシャツを多く紹介していますが、シャツを買うときは、第1ボタンから第3ボタンまでの間隔をチェックしてください。上まできちっと留めて着る人には関係ないですが、開けて着たい派の人は、第3ボタンが胸のどのあたりにくるかが重要になってきます。第3ボタンの位置は、骨格や胸の大きさで変わってきます。上品な胸の人は、下にすっと下がりますし、ゴージャスな胸の方は上に上がるので。可能なら、シャツも試着してからの購入をおすすめします。
❹ ゆったりだけどコンパクト
オーバーサイズやビッグシルエットは依然トレンドとして人気ですが、少しずつシルエットにも変化が出ています。ゆったりとしているのにクロップド丈など、ダボっとしているだけではない新たなバランスがじわじわと上昇中。今季らしさのバランスで春色を楽しんでいきましょう。
地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、女優や著名人のスタイリングも数多く手がける。大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評を持ち、執筆も多く手がける。現在は、ファッションアイテムのプロデュースほか、テレビやラジオに出演するなど多方面で活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)『おしゃれは7、8割でいい』(光文社)『日々是混乱』(集英社)など多数。最新刊に『大人の旅はどこへでも行ける 50代からの大人ひとり旅』(扶桑社)。
※ 2024年3月現在の情報となります。
※ 表示価格は全て税込価格です。
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