ファッションのご意見番ことスタイリスト地曳いく子さんが、独自の視点で切り込むオトナ女史のためのスタイル術「IKUKO’S METHOD」。今回のテーマは、春から初夏にかけて活躍するペラペラ単衣コートです。
STYLING BY IKUKO JIBIKI
PHOTO BY SHIN KIMURA
EDIT BY AKANE MAEKAWA
気分を変えたいなら、見た目を変えるのが一番
あたたかくなってきたと思ったら、急に寒さが戻ってくるという日々ですね。天候が定まらないこの季節の定番といえばトレンチコート。ですが、今年はもっと軽くいきたい気分です。これまでの重い3年間を過ごしてきた反動もあり、颯爽とした気持ちになりたいんです。風を孕んで舞うぐらいのペラペラコートで。トレンチも軽やかな素材のものを選びたいですね。確かにまだ寒い時もあります。でも、どんなに寒くても、季節はもう春。重さは禁物。ダウンや重いコートには別れを告げて、ライトダウンや暖かインナーで寒さはカバーしていきましょう。気分を変える一番の方法は、見た目を変えることですから。
地曳いく子が指南する
ペラっとコートのススメ
❶ ひらりと翻る春のトレンチコート
スプリングコートの代表格といえば、トレンチコート。日本でその潮流のひとつを作ったのは、昔、ササール・コートと呼ばれたコートなんです。こんな昭和な話題で申し訳ございませんが(笑、ファッション小ネタとして)、1958年のイタリア映画『三月生れ』でヒロインを演じたジャクリーヌ・ササールが劇中で着ていたコートに由来します。60年以上前のモノクロ映画ですが、興味があったら検索してみてください。女性が小粋にトレンチコートを羽織る、そんなイメージです。さて、今年のトレンチ系のスプリングコートを選ぶなら、カチッとしたものではなく、ペーパーのようにペラペラの単衣ものがおすすめ。薄手なので、前を開けてふわっと羽織ったり、袖を捲り上げたり、ベルトでウエストマークしてドレス風にしたり、自分流に形やボリュームを変化させ着こなしてみてください。
❷ 素材の進化がとまらない
仕事で服の企画にも携わってきていますが、毎回素材の進化には驚かされます。とにかくハイテク素材の進化がすごいんです。以前は、春の単衣コートといえばコットンやリネンがメインでしたが、今はあのパリッと感を保ちながら皺からの復活も早いペラっとしたコートが続々登場しています。かつてはラグジュアリーブランドでしか手に入らないようなハイテク素材も、私たちのステディブランドで買うことができるようになってきたのです。今回のアイテムを見て、こういうコートを持っているわという方もいらっしゃるかもしれませんが、素材のペラっと感がちがいます。形だけでなく素材感にもトレンドはあります。張りのあるしなやかなコートで、今年らしさを取り入れましょう。
❸ ちょっとしたツイストがおしゃれの素
パフスリーブのトレンチコートや、ドローストリングでフェミニンなボリュームをつくるアウトドアなアウターなど、パフっとした量感がプラスされている今年。シンプルにストレートな服でも素敵ですが、そのちょっとしたノイズやツイスト、つまり“いらんことをしている” (笑)のがおしゃれなのではないかと思います。ラーメンを食べるときに、胡椒をかけたほうがおいしいのと同じ感覚で、トレンドも捉えてみてください。パフっと感のあるぺラペラコート、注目です。
地曳いく子|Ikuko Jibiki
スタイリスト/1959年東京生まれ。数々のファッション誌で活躍し、女優や著名人のスタイリングも数多く手がける。大人の女性を美しくみせる的確な理論に基づくスタイリング術に定評を持つ。現在は、ファッションアイテムのプロデュースほか、テレビやラジオに出演するなど多方面で活躍。著書に『服を買うなら、捨てなさい』『着かた、生きかた』(ともに宝島社)『おしゃれも人生も映画から』(中央公論新社)『買う幸福』(小学館)『おしゃれは7、8割でいい』(光文社)『日々是混乱』(集英社)など多数。最新刊に『ババア上等! 番外編 地曳いく子のお悩み相談室』(集英社文庫)。
※2023年3月現在の情報となります。
※表示価格は全て税込価格です。
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