
GW恒例のフリーライブイベント「J-WAVE & Roppongi Hills present TOKYO M.A.P.S」が5月3日(土)、4日(日)の2日間、六本木ヒルズアリーナで開催される。今年はオーガナイザーにミュージシャンの長岡亮介を迎え、ヒップホップ、ムード歌謡、ファンク、ブルース、ポップスなど、例年以上にバラエティに富んだジャンルのアーティストが登場。ライブは耳や目だけではなく、空気で音を感じてほしいという長岡に、「TOKYO M.A.P.S」ならではの楽しみを聞いた。
ビルの谷間に“人”が鳴らす音が響く
2008年にスタートしたJ-WAVEと六本木ヒルズによるフリーライブイベント「J-WAVE & Roppongi Hills present TOKYO M.A.P.S」。毎年、オーガナイザーの元に個性豊かなアーティストが集い、六本木ヒルズアリーナの特設ステージで生の音楽を届ける人気のイベントだ。今回オーガナイザーを務めるのはバンド「ペトロールズ」のフロントマンで、ギタリストとしても活躍する音楽家の長岡亮介。

「オファーをいただいた時は、なぜ自分に? と驚きました。自分が出演アーティストを選ぶなんておこがましい気がしたし、引き受けてよいのだろうかと思いましたが、せっかく声をかけていただいたんだから、自分なりにおもしろいことができればと思いました」
その言葉通り、長岡さんの元にはバラエティ豊かなアーティストが集まった。ヒップホップグループ・ODD Foot Worksのメインコンポーザー/ギタリストであり、シンガーとしても活動する有元キイチ、8人編成のファンクバンドのオーサカ=モノレール、ラッパーの5lack、ブルースデュオのT字路s、ムード歌謡コーラスグループの純烈など。このイベントでしか見られないタイムテーブルが組まれている。
「有元さんは朴訥としているんですけど、ズルズルと引き込まれるような魅力があるんです。オーサカ=モノレールは最初にライブを見た時に『こんな人たちがいるんだ!』と一瞬にして引き込まれたファンクグループ。都心で響くファンクの迫力を感じてもらえたら。5lackは、いかつい強さを全面に出すラッパーとは違う、静かな強さがあると僕は思ってて。彼の音楽からヒップホップの奥深さを感じられると思います。T字路sは生粋のブルースを地でいくデュオ。生のブルースはパワーがものすごいんですよ。六本木のアスファルトにじわ〜っと染み込む魂のサウンドを期待しています。純烈は音から人間性がはみ出している感じ。そこがかっこよくて」
また、長岡さん自身のソロライブのほか、オリジナルラブ・田島貴男さんとの共演も予定している。

「昔、2人でツアーを回ってたことがあって、久しぶりに一緒にライブできたら楽しそうだなと。僕、いろんなところでよく言ってるんですけど、田島さんってSLみたいな人なんですよ(笑)。ブォーッと轟くドラフト音とともにものすごい勢いで突進してくるみたいな。令和の六本木にSLが現れたら、楽しそうじゃないですか?」
このラインナップの構成は、都心で行われる屋外ライブだからこそ、という。
「六本木って洗練されてるじゃないですか。こういうおしゃれな街で行うから、がちゃがちゃしているラインナップにしようと思ったんです。多様な音楽に触れる機会になればと思って、ジャンルはバラバラに。さらに、ミュージシャンの人間性が音の上に立つような、それぐらい “個”が立っているアーティストの方たちに声をかけさせてもらいました」
人間性が音の上に立つ。その意味を、今回のテーマに掲げた「肌で聴こう 素敵な人の素敵な音」という言葉とともに紐解いてもらった。
「フリーの音楽ライブなので、通りすがりの人にも『こんなに素敵な音楽があるんだよ』と伝えるには、派手な演出や、きれいにパッケージされた音ではなくて、人の魅力で鳴らす音が一番伝わるんじゃないかと思って。そういう音を響かせてくれるアーティストの音楽を耳や目だけではなく、空気で感じてもらえたらと思っています」
“音楽は機械ではなく、人が鳴らすものだから”と長岡さん。だからこそ、人間性が大事なのだと続ける。

長岡亮介|Ryosuke Nagaoka 神出鬼没の音楽家。ギタリストとしての活動の他にもプロデュース、楽曲提供など活動は多岐にわたる。「ペトロールズ」の歌とギター担当。J-WAVE「CITROËN FOURGONNETTE」ナビゲーター(毎週土曜日22:00~22:54)。
「音楽で人間性が伝わらなかったら、この世はきっと、綺麗な顔で、歌がうまくて、いい感じのことを言うアーティストしか残らないと思うんですよ。でも、そうじゃないですよね。その人が経験したことや感じたことから言葉が生まれ、メロディーが生まれる。だから、音楽は機械じゃなくて人が鳴らすんだと僕は信じていて。そうじゃないと、音楽をやっている意味がないというか、制作だって、演奏だってAIがすればいい。今回の『TOKYO M.A.P.S』は人間性を感じさせてくれるアーティストたちが一堂に介し、さらに彼らの音がビルの谷間で鳴らされる。それってとっても素敵なことだと思うんです」
長岡さんは過去にプレイヤーとしてTOKYO M.A.P.Sのステージに立ったことがある。その経験から他の音楽フェスや野外ライブにはない魅力を教えてくれた。
「野外ライブやフェスは広大な敷地だったり、自然が豊かな土地で行われる場合が多いですが、ここは都心の屋外ライブで、ビルとビルの間で音が反響している感じがあって独特でおもしろい。ビル風も意外と心地よくて、野外フェスで吹いてる風とはちょっと違う感じ。あと、周辺を疾走しているスーパーカーが結構いて、それがうるさい!(笑)」
でも、“その環境音も楽しんでいる”という。
「ラジオの収録時も外を走る車の音が入ることがあるんですが、それはそれでよしということにしているんです。『TOKYO M.A.P.S』でも、人が行き来してる音とか車が走ってる音とか、いろんな音がする中で鳴る音を聞く体験をしてもらえたら」

インタビュー終盤には今回のイベントのためにオリジナルの楽曲を制作していると教えてくれた。
「『TOKYO M.A.P.S』という言葉から、地図をテーマに作りました。自分があの日どこにいたとか、何をしたとか、後ろを振り返るとそういう地図ができている、そういうイメージです。来場者の方たちのその日のマップに、いろんなピンが打たれていて、その中の一つに『TOKYO M.A.P.S』がある。それぐらいの感じで、ふらっと遊びに来てもらえたらうれしいです」
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