INSTANT FLOW

誰そ、彼——藤原ヒロシの連載「INSTANT FLOW」#64

あなたは誰?って、ヒロシさんだろ。ごもっともです。でも知ろうとすればするほどわからない、それが人間というもの藤原ヒロシの奥行きというもの。インスタに漂うHIROSHI FUJIWARA(hf)の陰影をゆるりと観察する当連載、第64回は2025年4〜7月の投稿からおとどけいたします。

INSTAGRAM & TALK BY HIROSHI FUJIWARA
TEXT BY MIKA KUNII

——藤原さん、ずっと海外に?
hf パリ、スペイン、ロンドン、ニューヨーク……。ニューヨークはいいですね、日本と違って街の見た目が変わらないからなんだか安心できる。テナントはバンバン入れ替わるんですけど。
——ご滞在時、ものすごい豪雨でしたよね?
hf すごかった。ニューヨークに住んでる子が「こんなの初めて」って言ってました。
——気候が変だと言われて久しいですが……ヨーロッパでは熱波が。パリは今もクーラーが付いてないところが多いんですか?
hf カフェやレストランにはあまり付いてないですね、さすがに付けないと駄目なんじゃないかって3年前から言ってます。
——景観的に室外機がダメってことなんでしたっけ?
hf 景観もだし、たぶん室外機の影響でもっと暑くなるだろうから。でもクーラーがないともう、死んでしまいますよね。
——景観を損ねない室外機を発明したら需要があるんじゃないですか? どうですかフラグメントデザインで。
hf 似たような話はしてるんですけどね。でもじきに、どこかでできるとは思うんです。室外機だけ地下に持ってくとかね。

4月8日——前略、東急本店さま

——というわけで、東急百貨店本店。まっさらに……夢の跡。
hf もう20年くらい前、東急本店のすぐ裏に住んでたんですよ。約10年間。で、住まいの工事をすることになったので、スタジオ用に借りていた別の部屋にちょっと住んでみたら、そこが便利だったから家に帰らなくなっちゃった。
——そちらに移るまでは東急本店、使ってました?
hf そうですね。上の階の本屋(ジュンク堂)にカフェがあって。
——あった! 端っこのほうにそっと、パイプ椅子みたいな椅子が置いてあるような。
hf アイスティーとコーヒーしかないみたいな。
——なにやら文化祭みたいなカフェ。見つけた!と思いました。
hf あそこが良かった。
——今思うと、百貨店の王道でありつつ既定路線じゃないところもあって良かったですよね。あの時代ならではのおおらかさが。
hf 地下の、おいしい水ようかんがある店も良かったですよ。地下通路も良かった。ドゥマゴもね。
——ドゥマゴもBunkamuraも好きでした、渋谷の喧騒から結界が張られていた感があった。
hf うん。本店、すごく良かったです。
——東横店との循環バスも乗ったなー。次の館は、また全然ちがう趣きになりそうですね。

4月14日——ともだちの庭でワープ

hf ここ、友人の家です。
——日本ですか? ヨーロッパかと思いました。

——ご友人宅でごはん。
hf そう、プンタレッラの一皿も作ってくれました。この野菜を家で栽培してるって、すごくないですか。あまり流通してないですよね。
——たしかに。ここはミラノか。それにしてもご自宅、どこにいるかわからなくなりそうな素敵さ。
hf 田舎に佇む一軒家、もともと料理研究家の家だったったようです。どこからどこまでが庭か分かんなくて、いろんな野菜を作ってて。

4月16日——世界の果てを知った頃

hf これは1983年ぐらいじゃないですかね、20歳の頃のロンドンです。
——スーツ、かわいいですね。どこで買ったか覚えてますか?
hf ワールズエンドです。ヴィヴィアン・ウエストウッド。
——この頃ロンドンに住んでいたんですか?
hf 住んだことはないです。どこからを住むっていうか分かんないけど、いつも3カ月くらい滞在してました
——コメントがいっぱい来てます。「モーガン」。……モーガン?
hf 車のこと。
——「#OG」とは?
hf 「オリジナル・ギャングスター」。
——勉強になります。

4月16日——あなたは誰?(1)

——さて、当連載おなじみの「あなたは誰?シリーズ」。今回は特集でお送りします。
hf いや? この人、以前うちに遊びに来ていたときも「誰?」って聞かれた気がしますけど。
——え、すみません。左の人?
hf 左はKBって子だけど。真ん中の人……コメント欄に書いてあるんじゃないですか?
——パク・ソジュン。めちゃ有名なお方でした。こちらの女性は?
hf チョン・ユミさん。『Train to Busan』に出演している。
——それは『新感染 ファイナル・エクスプレス』ですね。
hf はい。あれの最後まで生き延びる女の子。
——軽くネタバレ(笑)、とても活躍されてる女優さんなんですね。次のお方はモデルの秋本梢さん。この後も「誰?」がつづきます〜。

4月19日——おいしいMIX (1)

——今回は藤原さんの「MIX特集」も。このYOASOBI「New me」の、すごく気持ちよかったです。
hf YOASOBIとハロルド・メルヴィン。
——こういうのって、ふと、思いつくものなんですか?
hf ふと、やろうかなって思うんですよね。

4月22日——話題の薬局ポッドキャスト

——ポッドキャスト「BAD PHARMACY/世界のお腹を温める」。
hf めちゃめちゃ人気あるんです。フラグメント大学の卒業生から「ポッドキャストをやってみたい」って言われて、じゃあやってみましょうって。いろいろ試行錯誤して、やってます。
——卒業生からの持ちかけがきっかけで……(調べる)出演TaiTan 、上出遼平feat.藤原ヒロシ。めちゃめちゃおもしろそうですね! 聴きます!

4月23日——ようこそ笑顔の村へ

——『ガンニバル』だ。
hf そう、『ガンニバル』。
——見たとき、何だろうって思いました……こわ〜い。
hf ドラマの架空の村のホームページをいかにも本物のように作り込んでる。めちゃめちゃやばくて最高。
——コメント「この村に行きたい」って何(笑)

4月24日——ともだちの背中

——面を洗って出直して来い。
hf これは友達の背中なんです。
——「ガーゼ」って何ですか?
hf 「GAUZE(ガーゼ)」って、日本のハードコア・パンクバンド。
——そうなんですね、たしかにコメ欄が熱いです! この背中はGAUZEの人?
hf ちがいます。日本好きの外国人。
——何が書いてあるかは分かってるんですよね?
hf もちろん、彼が作ったんだし。もともと日本のパンクバンドが好きで、日本語しゃべれますから。
——藤原さん、パンクは聴きますか?
hf あんま聴かないけど。好きも何も、パンクの出なんで。
——失礼しました。誰に話しかけてんだって。面を洗って出直して来ます……

4月24日——Tom Sachs Space Program: Infinity



——トムさんの。
hf そうです。トム・サックスの韓国の展覧会です。オープニングのイベントは9時間に及ぶ寸劇でした。
——何をやってたんですか、9時間も。
hf トム、いつも寸劇をするんです。日本でもお茶会をやっていたじゃない? 今回はNASAの企画なんで、宇宙船を飛ばすっていうものでした。見る人も出たり入ったり自由で。本気で9時間ずっと演じていましたよ。
——この、藤原さんも登場していらっしゃるスナックの看板みたいなのは何でしょう?
hf 友達とか知り合いとかの写真をNASAのメンバーだっていう体にしてるんですかね。

4月25日——Tom Sachs “PICASSO”

——トムがピカソを再構築。洒落てる!
hf これは、めちゃめちゃ良かったです。大きな美術館でNASAの展示をやっていて、こっちは小さなギャラリーでやってたんですけど。
——はじめての作品ですか?
hf ピカソ展は、パリでやってからの2回目かな、

4月26日——おいしいMIX (2)(3)

——LISAとサカナクション「怪獣」、なんだか癖になるMIXです。
hf 山口君が、「何で他の人のばっかりやって僕のやってくれないんですか」って言うから(笑)
——本人からのリクエスト! もうひとつ、ビートルズとサカナクションのMIXも好きです。

——こちらはボブ・マーリーと……どなた?
hf アン・ルイス。本人が「いいよ」って、公認です。
——ご本人に聞いたんですね。
hf 友達がアン・ルイスに聞いてくれたら「大丈夫よ、ありがとう」と。

4月30日——バッテリーの残量問題

hf UNDER COVERの事務所。
——高橋盾さんと何かなさったんですか?
hf これから何かやろうかって、打ち合わせに呼ばれた時ですね。
——(iphoneの画面を見せている最中に)あ、しまった、電源が落ちる……
hf まだ外が明るいうちに?
——今日、充電ケーブルもモバイルバッテリーも持ってないんです。どうしよう……
hf なぜそういうことに。朝、出る時に満タンじゃないんでしょうね。
——家を出る時に16%ぐらいで、どうしようと思ったんですけど。
hf なぜそういうことが起き得るんですか? 常にあるんですか、こういうこと。
——藤原ヒロシにゴン詰められてる。
hf 違う違う。そういう人いるじゃないですか。バッテリーが0になる人。
——うう。どちらかというと男性の方がバッテリーの残量に敏感なんですかね。
hf かも。
——やっぱり不安ですか?
hf 不安です。
——私どうして、どうにかなると思っちゃったんだろう……

5月13日——おいしいMIX (4)(5)

——このアイナ・ジ・エンドのMIX、なんだか切なくてよかったです。
hf こっちは南佳孝とケンドリック・ラマーのMIX。

——浮遊感あふれる「スローなブギにしてくれ」。

5月16日——渋谷は異才たちのたまり場だった

——「僕らの大学拒否宣言」、おもしろそうなタイトルですね。
hf 浜田哲生さんの本です。今、友達と渋谷の歴史の本を書いていて。その中に「アップルハウス」の話も出したくて、読んでみようと。
——「アップルハウス」?
hf 堀内誠一さんのいた渋谷区南平台のアド・センターの敷地内に、この浜田さんが「アップルハウス」というクラブハウスを作ったんです。そこにジョン・レノンやオノ・ヨーコ、高校生の頃の坂本龍一とかいろいろな人がやってきて、たまり場になって。その後、写真家の小暮徹さんが編集者の森永博志を誘って、「ROCK VOICE」という雑誌を作った。
——森永博志さんって、この前亡くなった方ですか(2025年4月15日没)。
hf そうなんです。そんな「アップルハウス」を作った人の本です。
——こんなすさまじい異才たちが集まった場所があったなんて知りませんでした……

5月18日——おいしいMIX (6)(7)

hf これは、Number_iとNewJeans。
——Number_iの「Recipe」と NewJeansの「Ditto」。憎いMIX。こちらは?

hf 古井戸って知ってます? フォークのデュオ。
——あ、RCサクセションの人ですよね。
hf そうそう、仲井戸麗市と加奈崎芳太郎。いちばん好きな人たちです。
——藤原さんはどこで知ったんですか?
hf 姉が聞いてた。
——お姉さんの影響、大きいですね。
hf 古井戸は解散したけど、仲井戸麗市はRCに。
——そうなんですね。古井戸と仲井戸は関係あります?
hf いや。フルイドって英語(Fluid/流体)に当て字というか、ダブルミーニングなんじゃないですか。

6月1日——あこがれ共同隊

——これは何かのスクショですか?
hf 70年代のテレビドラマのオープニングです。『あこがれ共同隊』っていうんですけど。この中にgoro’s(ゴローズ)の店が出ていたんで、そのビデオをずっと探していたらオープニングだけYouTubeに上がっていました。
——(調べる)わ、このドラマおもしろそうですね。郷ひろみ、西城秀樹、桜田淳子。人気アイドルたちが出ている青春ドラマですか。
hf 彼らが原宿で洋服屋を始めるっていうドラマで、いちども再放送されていなくてビデオにもなっていないんです。 主題歌は吉田拓郎が書いた曲「風の街」を山田パンダが歌ってて。
——再放送がないのはもったいない。ぜひ配信をお願いしたい。

6月2日——おいしいMIX (8)(9)

hf 泉谷しげるMIXです。
——この組み合わせ、おもしろい。

hf これは、良かったです。ブルーノ・マーズ「ソウル・ソニック」と「いとしのエリー」。
——「いとしのエリー」の受け皿の大きさよ!

6月5日——まぼろしの猫

hf シュレディンガーの猫。
——Dead or Alive.
hf あれは量子力学ですから、実際に箱に入れたわけじゃないんですけどね。

hf これもシュレディンガーの猫シリーズです。ネバーマインド量子力学。
——うわああ、かわいい。これらTシャツはラフォーレで売っていたんですか? 欲しかったな……!
hf そういうのがいいんです。あのとき買えたのに買えばよかった、というものが世の中で一番いいものです。
——なるほど……うーむ。

6月5日——赤坂の天国にて


——草月ホールで、勅使河原宏さんの書の展示があったんですね。イサム・ノグチの石庭「天国」にて。
hf そうですね。書についてはよく分からなかったんですけど、勅使河原季里ちゃんと友達だったから。N.Y.で知り合った頃はパンクロッカーで、華道界の人だとは知らなかったんです。
——パンクバンド、イールドッグですよね。かっこいい。

6月13日——実家と、少年と、ずっとの夏

——クワガタだ。
hf 実家の庭にクワガタが来る木があって、この前も覗いたら、いたんです。捕まえてまた戻しました。
——子どもの頃から?
hf うん。よく捕ってましたね。飼うこともあるし、売ることもあった。ペット屋に持ってったら100円とかになるの。
——明け方に捕りにいくんですか?
hf 朝だったかなぁ。この時は夕方だったけど。
——樹木に砂糖水を塗るんですか?
hf そんなことはしてなくても、もうその木にいるんです。
——カブトムシもいますか?
hf カブトムシもいますけど、すぐ死んじゃうんですよね。カブトムシは、ひと夏で。クワガタは種類によっては数年、生きるのもいると思います。
——少年時代は、虫捕りが好きだったんですね。
hf そう。僕らの時代って、エンタメがなかったんで。早起きして、虫捕ってきて、学校で遊んで、学校の帰りに売りに行く。で、アイスクリーム食べる。
——いいですね。いつまでも、どの夏も、そこにいてくれるクワガタ。
hf いいですよね。

——伊勢に帰ったら「美鈴」でおでん。
hf ぎょうざ屋なんですけどね。

——ホタルが舞う黒い森。
hf ホタルは家から車で30分ぐらい行ったところで。びっくりするほどいました。
——めちゃ飛んでますね!
hf このあたりでホタルを見られるタイミングは、6月頃かな。日が暮れて、梅雨の晴れ間に。真夏になったら、もういなくなってしまうんです。

——うわー、このトマト、なんておいしそうなんだろう。
hf 驚くおいしさでした。伊勢育ちです。
——YUSEI FARM。伊勢やさいのHOLY TOMATO、「一般的なトマトに比べて含有栄養量は2倍以上を実現」、「飲む美容液」とありますね、すごい。取り寄せたい!
hf 取り寄せてみてください。トマト、ほんとおいしいです。

6月18日——おやツー

hf フィオレンティーナの。
——箱庭プリンアラモード。コンパクトでかわいくて、おいしい。

——そして虎屋の。ザ・宇治金時。

6月22日——やあ、オムニコード

——これは何でしょう?
hf オムニコードという楽器です。80年代に生まれて、出てはなくなり、最近復刻しました。出るたびに買ってるんです。SUZUKIは鍵盤ハーモニカやオルガンを作ってるメーカーですね。
——どうやって演奏するんですか?
hf 簡単。ここにコードが全部書いてあって……ハープと同じ。オートハープの機械版です。
——音色が気になりますね。
hf めちゃめちゃいいです。機械っぽくて。いろいろ選べるんです。ハープも、ピアノも、ギターもある。
——ちょっと触ってみたい。楽曲の中に取り入れてるんですか? それとも趣味で奏でる感じ?
hf まあ趣味で奏でる感じじゃないですか。レコーディングで使ってる人もいると思います。

6月25日——鉄と茄子は熱いうちに

——鉄の塊のような姿の〜。
hf 焼き茄子。京ナスって真ん丸ですよね。
——この後、皮をとって、切りわけてくださるんですかね。
hf そう。で、出汁に付けて食べます。いい料理屋に行くと大体いちど、見せるためにこうして出てきます。
——家政婦は見た、の気分です。

6月26日——アルコールとの相性について

——ジャン・トゥイトゥさんの素敵なワインが。
hf ジャン、最近はワインばっかり作ってるんですけど。
——A.P.C.(アー・ペー・セー)を手放し、人生の節目を迎えたジャンさんですね。
hf 僕がお酒飲まないの知ってるけど、くれた。
——藤原さんって、お酒はいつから飲まなくなったんですか?
hf 若い頃バイトしていた飲み屋で飲んで、気持ち悪くなって。それ以来飲めなくなった。
——相性ってものがありますものね。でも一度くらい、やっぱりおいしいかも、とはならなかった?
hf だってもう、匂いが気持ち悪いから。
——ノンアルでいきましょう。

6月27日——あなたは誰?(2)

——次々いきます「あなたは誰?」。
hf フューチュラ2000。アーティストです。
——撮影したのはどちらですか?
hf これはパリのスタジオです。ヨウジ・ヤマモトのショーで。

6月28日——ミス・サッシーを探して

hf これ、タリン・サイモンというアーティストの作品。めちゃめちゃいいんです。
現代アートのギャラリーALMINE RECHでタリン・サイモンの展示をやっているというので行ってきました。
——お好きなんですか?
hf 大好きです。アメリカの社会派アーティストです。
——めっちゃいい絵ですね。
hf 写真ですよ。ミス・サッシーのこと、知ってます? トランプが「移民がペットを食べている」と発言して波紋を呼んだという……
——あ、それ、見かけました。
hf そのきっかけになった猫です。オハイオで「うちの猫がいなくなった。隣に住んでるハイチ系の移民が食べたに違いない」って警察に電話があったことがニュースになったんです。それを見てトランプが「移民はペットも食べてしまう」とプロパガンダに使って拡散して、物議を醸しました。結果的に猫は2日後に地下室から出てきた。
——ミス・サッシー、そこにいたのね(笑)
hf その出てきたところを写真を撮りに行ったの、タリン・サイモンは。そういう奥行きのある作品をつくっています。
——ジャーナリスティックで、シニカルで、チャーミング。

7月2日——下山病、かもしれない

——藤原さん、下山事件のこと、ずっと気になってますよね。
hf 下山病なんで、僕。その本めちゃめちゃおもしろかったです。
——真相、解明されていました?
hf 真相解明なんかどうでもいいんです。その過程がおもしろいんで。
——結局、国鉄の総裁は三越で消息を絶ったんですよね。
hf 三越に行って「すぐ出てくるから」って言ったまま戻ってこなかった。
——なにか新しい知見が?
hf 前作『最後の証言』から、著者が20年後に出した本です。『最後の証言』を読んだ人々の中から「実は私もよく知ってます」とか「どうやらうちのお父さんも関係してたっぽい」とか、どんどん出てきた声をまとめた本。よかったら前のから読んでください。めちゃめちゃスリリングで、おもしろいんです。

7月8日——サンセバスチャンのヒロシ


——こちらのかわいい柴犬は?
hf サン・セバスチャンで出会いました。「柴犬だ、かわいいね」って言ったら、名前はヒロシだっていうから。僕もだよって、仲良くなりました。
——出会いましたね〜。飼い主はスペインの人ですか?
hf ウクライナ人、亡命して来ていました。
——なぜヒロシと名付けたんですかね。
hf わかんないけど、日本好きなんじゃない? 柴犬を飼うぐらいだから。
——日本人の名前でヒロシはメジャー。

7月8日——遠い街のガチャ

——これ何ですか。
hf サン・セバスチャンのガチャガチャ。すし屋の前で。買わなかったけど。
——サン・セバスチャンは、どうでした?
hf おもしろかったです。食べ歩きの街みたいな。有名なレストランには行かず、つまみ歩くみたいな感じで過ごしました。
——それは最高に楽しいですね。

7月11日——ユニユニバース

——吉田ユニさんとコラボされましたね。
hf 僕ではなく、ユニフォームエクスペリメントというブランドからユニさんとコラボしたいと相談があって実現した企画です。
——かわいい。ユニさんワールドですね。テーマはお任せ?
hf 何でもどうぞって。
——そして蜜柑ユニバースが生まれた。すごい、これ一発撮りかなぁ……

7月12日——ロンドンのミュージアム

——「ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ」へ。
hf ゴッホとキーファーを観に。

——こちらは「テート・モダン」。
hf リー・バウリー。

——マリー・クワントは「サーチ・ギャラリー」で?
hf フラワー展という展示をやってて。

——アダム・スミス?
hf アダム・スミスとジョン・ロックとベーコン。アートとは関係ないのに「ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ」にある。よくわかんないんだけど。
——ゴッホとキーファーはどうでした?
hf キーファーは、巣鴨っぽい。
——巣鴨? もっと詳しく教えてください(笑)
hf ブロンズを使った、ちょっと立体感のあるものが良かったんだけど……ブロンズ色ってなんか巣鴨っぽくない(笑)? おじいちゃん・おばあちゃんが好きそうな。
——そういうことですね(笑)
hf ゴッホ展は良かったと思います。

hf これはロスコです。

7月14日——思い出のニューヨークカレー

——この料理が、めちゃめちゃ気になって。
hf ニューヨークのカレー屋です。昔からニューヨークに行ったら絶対に行くカレー屋だった。ホテルからまあ近いし、24時間やってて……コロナ以降は22時に閉めるそうだけど。タクシーの運転手が行くようなカレーです。
——ドキュメント72時間感ありますね。ニューヨークとカレー、ちょっと意外な感じですが、おいしい?
hf うん。僕はすごく好き。辛いものもあります。あと、ピュアベジタリアンもビーガンも。
——なんだか、日本のお家カレーにも見えるんですよね。

7月16日——あなたは誰?(3)

——こちらの女性は?
hf リサ・クーパー、昔からの友達です。もとはスタイリストで、LAに引っ越してたんだけど、たまたまこの日ニューヨークに来ていたからお茶しました。もう30年ぐらい前から仲良しです。

7月16日——ニューヨークで録音

——この方たちは?
hf これニューヨークでポッドキャストを録ったときです。
——あ、「BAD PHARMACY/世界のお腹を温める」ですね? ニューヨークで録音したんですねー。
hf 出演者のひとりがニューヨークに住んでるんで。僕がニューヨークに行くんで、ついでに1回ぐらいここで録ろうかって。
——上出さんですかね。海をまたいだ回も聴いてみよう〜。

7月18日——あなたは誰?(4)

——この人は?
hf ニナ・ハーゲン。
——(調べる)ドイツのパンク&ニューウェイブのアイコン……パンクのゴッドマザー。どういう出会いですか?
hf 22歳とかその頃に、知り合いから僕に連絡が来て。それ以来、毎日のように遊んでいた気がします。ニナの娘も一緒に。ニナ、すごくいい人です。
——なにか思い出話ありますか?
hf ニナが日本に来た時もずっと遊んでいて、ある日ラフォーレの前で待ち合わせしたら人だかりができていました。
——また、わかりやすい場所で待ち合わせしましたね。
hf 実はどんな人かいまいちわかってなかったけど、NHKで見たらすごい人でした。ドイツのメルケル首相の退任式の日、送別曲は本人が選曲できることになっていて、メルケルはニナの曲を選んだんです。
——メルケル首相、ファンだったんですか?
hf メルケルが学生時代、ふたりは政治についてやり合ってたんですよね。テレビでも討論したりして。そんな関係で、ずっと仲が良かったらしいです。
——そのエピソード、胸熱です。

7月18日——あなたは誰?(5)

——ラスト誰?です。
hf それ、Spazz Attack(スパッツ・アタック)。ダンサーです。デヴィッド・ボウイとかディーヴォの後ろでも踊ってたのかな。

hf ここは、ロンドンのワールズエンドの中。
——こういう雰囲気だったですねー。そのショップの人が、こちらの方ですか?

hf さっきの写真の左の子。
——すごく素敵な人。リジーさん、モデルさんですか。
hf モデルもしてたかな。キョンキョンのレコーディングでロンドンに行った時も、アルバムに参加してもらったかな。ちょっとだけラップのパートがあって、それを彼女が。

おまけ(ネタバレあり)

——デミ・ムーアの映画『サブスタンス』はご覧になりました?
hf あれ、やばかったです。NHK-BS『キャッチ!世界のニュース』で藤原帰一さんが紹介していたんです。ルッキズムとフェミニズムみたいな問題提起だというので、そんな真面目なテーマなのかと思って見に行ったら、後半が信じられないぐらい血みどろホラー。
——そうみたいですね。
hf もうめちゃくちゃ。前半と後半で人格を総入れ替えしたぐらいに変わっちゃって。
——見ようか迷ってたんですよね。
hf ホラーが嫌いじゃなかったら、いいと思いますけど。ホラーだけどクローネンバーグというか。急にめちゃスプラッター。
——スプラッターかぁ。私はちょっとダメかもです。
hf それが苦手な人は無理だと思います。知らずに行ったら気の毒かも。デミ・ムーアは、すごかったです。

 

藤原ヒロシ|Hiroshi Fujiwara
1964年三重県生まれ。DJ、音楽プロデューサー、ファッションクリエイター。fragment design名義でファッションをはじめさまざまなジャンルのクリエイティブ・ディレクションを行い、ストリートカルチャーに多大な影響を与えている。