特集麻布台ヒルズ

A VISIONARY HOSPITALITY

世界初、アマンの姉妹ブランドホテル「ジャヌ東京」が目指すホスピタリティとは?

世界中にファンを持つラグジュアリーホスピタリティのパイオニア「アマン」。その姉妹ブランド「ジャヌ」の世界初となるホテル「ジャヌ東京」が、麻布台ヒルズにオープンしました。国内外から注目を集める「ジャヌ」第1号の立地に、なぜ麻布台ヒルズが選ばれたのか。ホテルの総支配人・田中紀子氏が「ジャヌ東京」のビジョンやこれからのホテルの在り方を語ります。

TEXT BY HILLS LIFE DAILY
PHOTO BY Ryo Yoshiya
illustration by Geoff McFetridge



近年はホテルの選び方が変わりつつあります。以前は空港や街への近さといった利便性でホテルを選ばれる方が多くいらっしゃいましたが、ホテルを単に宿泊する場所としてではなく、「特別な体験」を楽しむために選ぶ方が増えてきています。

私自身、コロナ禍を経て、ホテルはもっと「人と人とのつながり」を実感できる空間になると面白くなるのではないかと思っています。もちろん気心知れた家族や友人でホテルステイするのも楽しいものですが、初対面の人同士が出会い、何かの体験を共にしたり、発見の喜びを分かち合ったりすることで心地よい社交が生まれる。そんな機会を促すアクティビティをたくさん提供することが、これからのホテルのひとつの在り方だと考えています。

人と人とのつながりが生まれるホテル体験を

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1/3©JANU TOKYO
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新ブランド「ジャヌ」は「アマン」の思想を受け継ぎ、タイムレスなデザインであること、それぞれのデスティネーションに根差したおもてなしを提供していることは共通しています。「アマン」が、個を尊重し静謐な雰囲気の隠れ家のような空間であるのに対し、「ジャヌ」では、人と人とのつながりの中で生まれるエネルギッシュで躍動的な雰囲気を味わえる空間であるところが特徴的です。

麻布台ヒルズもまた、多様な人々のつながりを大切にしたプロジェクトです。商業施設やオフィス、レジデンス、クリニック、学校、アートギャラリーなど、実にさまざまな役割を持つ施設が入り、まさに都会の中のヴィレッジのようです。そこに、私たちが大切にしている精神との親和性を感じました。私たちもヴィレッジの一員として、さまざまな人々をつなげる場所や時間を提供していきたいと思います。

個人と社会が健康的につながる「ソーシャルウェルネス」

©JANU TOKYO

ジャヌ東京では、人と人とのつながりを大切にするための企画を考えています。例えば、私たちのケーキショップでは、ホールのケーキをあらかじめピースに切り分けてお売りするのではなく、お客様のご要望に応じた大きさにカットして販売できないか検討しています。お望みのサイズを伺う中で、「仕事がうまく行ったご褒美に、大きめに」とか、「ダイエット中だから薄く切ってね」とか、お客様との間にコミュニケーションが生まれることでしょう。小さなことですがジャヌのコンセプトにつながるサービスだと考えています。さらに都内屈指の広さを誇るウェルネス施設では、個人と社会がつながるための「ソーシャルウェルネス」に重きを置いた体験を提供しようと思っています。

ジムに通われる方の悩みとして、一人で黙々と頑張っているとつらいことばかりで楽しみがない。継続するのが難しいという声をよく聞きます。これからは、一人で健康を目指すのではなく、みんなで身体と心が満たされるウェルネスな状態へ。私たちが独自のプログラムを作成し、参加される方々がお互い交流しながら、目標に向けて一緒に頑張る「グループセッション」に力を入れていきたいと思っています。宿泊される方もジャヌ東京のウェルネスメンバーも一緒に楽しみながらトレーニングすることで、自然に人と人が出会い、つながる。そんな場所にしていきたいのです。例えば、スピニングバイクのグループセッションで80年代の曲を流せば、同じ年齢層の人たちが一緒に頑張りつつ、大いに盛り上がる、ということもあるかもしれません。ゴールに向けて頑張る一体感や、目標を達成した時の感動を、ぜひとも味わっていただきたいと思います。

施設も多様です。ジャヌ東京は延べ床面積約4,000㎡と、都内のラグジュアリーホテルのウェルネス施設としては最大級の広さです。全3フロアには、4レーンの25m温水プールの他、グループエクササイズにお使いいただけるスタジオもご用意しています。ボクシングやシミュレーション・ゴルフ、エアリアルヨガ、スピニングバイクなど多彩なプログラムをお楽しみいただけます。もちろんリラクセーションやマッサージの施術など、いわゆるスパの要素も充実しています。美容面だけにフォーカスするのではなく、身体・思考・精神がトータルで健康になり、他者との関係性も生まれる「ソーシャルウェルネス」を目指しています。

麻布台という土地が、さまざまな人の魂を響かせる

©JANU TOKYO

東京は、伝統があり、現代アートがあり、文化に根差した歴史があり、さまざまなものが複合的に交差する刺激的な都市です。中でも麻布台は独特なエリア。ビジネス街でも繁華街でもありません。近くには大使館も多く日本在住の外国人の方や各国富裕層のお客様もお迎えすることになるでしょう。マーケットに偏りがないからこそ、いろいろなバックグラウンドを持った方々が集まり、他にはない体験が提供できると考えています。また近年オープンした東京のラグジュアリーホテルの中では珍しく、ジャヌ東京は1階から13階の低層フロアに位置しています。地上に近く、豊富な自然に包まれて、季節を身近に感じることができます。麻布台ヒルズに遊びに来る人、働く人、泊まる人、住む人など、多様な人が集まる場所として、ユニークな空間になるのではないでしょうか。

「ジャヌ」とはサンスクリット語で「魂」という意味ですが、魂を響かせるモノやコトが豊富にあり、人々が行き交い、快活さが漲っているこの土地こそ、ジャヌ第1号となるホテルのロケーションとしてふさわしいと考えています。これからのジャヌブランドの礎となるジャヌ東京を、新たなランドマークとなる麻布台ヒルズに開業できることを嬉しく思っています。この夢のようなプロジェクトが今後にどのようにつながるのか、今から楽しみです。

profile

田中紀子|Noriko Tanaka
ジャヌ東京 総支配人。1995年津田塾大学英文科を卒業後、ハワイ州立大学マノア校でホテル経営学修士課程修了。東京、香港のラグジュアリーホテル勤務を経て、2019年から伊勢志摩にあるアマンのリゾート「アマネム」で総支配人を務めた経験を生かし、2023年「ジャヌ東京」総支配人に就任。